探究型学習と振り返りで生徒の理解を深める
ニュージーランドも日本のように国の教育カリキュラムについて、常に見直しをしています。「探究型学習(Inquiry-Based Learning)」という言葉が教師の教育的手段として初めて登場したのは、2007年の改訂から。それまでも現場での実践はされているところもあったそうですが、この年に明確に認識されるようになったといいます。それは、生徒主体の探究だけでなく、教師にも教育的手段としてinquiry(探究)という言葉が使われるようになった分岐点でもあります。
さらに、ニュージーランドはICTの教育への導入にも積極的です。
「ICT を使って教育をすることは、生徒が自分で情報にアクセスし、選ぶことができるということです。その時教師は、どの情報を選んだらいいのかという方向性を見せる役割ができるでしょう」


「今の時代の子どもたちは、デジタルネーティブ。そんな世代のICTアクセスを制限することは、逆に世界を狭めることになりかねません。一方で、得た情報をどのように精査していくかという目は養われていないため、そういうときにこそ教師がガイドすべきです」とヤングス博士は言います。
セミナーでは、参加した教師たちがグループに分かれて、様々なワークショップを行いました。
ヤングス博士は「ここには10年、15年以上の経験を持った教師が40人以上います。その人たちがこうして経験や考えを共有していくことで、それはどんどん広がり、何倍にも増えていくのです。ICTツールはそれに近いものがあります。とても便利で、それだけの知識や経験にアクセスできるものを生徒に許可しない手はありません。その情報の選び方、見方を示していくのが皆さんの役割です」と教師たちに呼びかけました。
セミナーでは、参加者全員が協力して解決していくプロジェクトや、グループで教育に必要な価値を改めて話し合うワークショップなども開かれ、教師たちは「またこれを生徒たちと取り組んでいきたい」と、柔らかな表情で会場を後にしていました。


取材・文/岩辺みどり