子どもの権利意識が大人を変える
同書は子どもたちに「権利を主張する時は、法律に基づいて説得力のある説明をする」よう求めています。山崎さんは「もちろん大人には、子ども以上に説得力のある説明が求められています」と言います。
しかし、周りを見回せば、大人たちが子どもに論理的な理由も示さず、ルールを押し付けるケースが目につきます。多くの学校現場では今も、「伝統」だからと危険性が指摘されている組体操を続けたり、スカート丈など服装や髪形について、必要以上に厳格な校則を押し付けたりしています。「例えばスカート丈なら、学校側が生徒と協議して決めるのが民主主義的な姿です。『階段の踊り場で、下からのぞき込まれない長さは何センチ』などの科学的根拠を提示するのも面白いと思います。しかしこうした手続きには手間がかかるので、管理者がトップダウンでルールを決めてしまうのです」
子どもたちが正しい権利意識を身につければ、大人たちのこうしたやり方は通用しなくなります。部活動でも、指導者が体罰を加えていれば、証拠を集めて外部へ被害を知らせる部員が出てくるでしょう。親子関係でも、虐待や過干渉といった人権侵害を止めるため、行動を起こす子どもが増えるかもしれません。山崎さんは言います。
「子どもたちが法律について考える力を身に着けることは、大人たちの意識をも変えるきっかけになるかもしれません」
取材・文/有馬知子 イメージ写真/鈴木愛子
山崎聡一郎
