「ブラック企業」に対する「ホワイト企業」を証明・支援する仕組みをつくろうと、弁護士が中心になって、一般社団法人ホワイト認証推進機構(代表理事:仙谷由人)という組織を立ち上げた。企業の労働環境が整備されているかをチェックし、「ホワイト企業」として認証し、よりよい雇用や労働環境につなげようと取り組んでいる。
ホワイト認証とは、「経営陣が労働法制などを守る意欲を持っていること」「就業規則などの整備がされており、運用実態に問題がないこと」などを、弁護士で構成する「ホワイト弁護団」や社会保険労務士、税理士、コンサルタントらが認証する仕組み。社長からの聞き取り、資料の検査、全従業員へのアンケートをもとに審査する。認証を受けた団体は、ホワイト認証マークなどが使用できる。
ホワイト弁護団代表の大川原栄弁護士に、ホワイト企業を評価する意義や、経営者と労働者の間にあるよくある誤解などについて、話を聞いた。
ブラック的な経営で利益を出している経営者もまだ多くいる
日経DUAL編集部(以下、——) なぜ、あえて「ホワイト」である企業を認証する仕組みをつくったのでしょうか。

大川原弁護士(以下、敬称略) 働き方改革で、出産・育児などに関する先進的な制度があるかどうかなどが注目されるようになりました。ただ、中小企業などを中心に、そもそも就業規則が不十分だったり、残業代の支払いなどが正しく理解されていなかったり、という企業がまだ多くあります。基本的なことが守られていない企業では、出産・育児に配慮した制度などを整えても、形だけになってしまうのではないでしょうか。
労働基準法などを守ることは、当たり前のことです。でも、この当たり前のことがきちんとされていることを、評価する仕組みはありませんでした。子育て支援を後押しする「くるみんマーク」、障害者雇用、そして品質管理の「ISO認証」など、部分によって企業を評価する機能はあるのですが。
法律を守らず、例えば時間外手当を支払わずサービス残業をさせたり、有給休暇を与えなかったりして、人件費を削り、ブラック的な経営で利益を出している経営者もまだ多くいます。「残業代を払っていたら会社なんてやっていけない」「まじめに残業代を払うなんてばからしい」とおおっぴらに話す経営者もいるのです。
経営者が、労務管理をきちんと行い、法律を守りながら、少しであっても利益を出して企業を維持していることは、実はすごいことなのです。上場企業や大企業であっても、問題が発覚することはたびたびあります。「正直者がばかを見る」といったことになってしまっては、もったいない。「すごいこと」と証明する仕組みをつくれないかと考えました。