Noが言えるようになると、YesやWantが自然と出てきた

 「娘が自転車に乗りたがっているのよね~」と妻が言うので、自転車の乗り方を教えるのはやってみたいなと、広場に行こうと子どもたちと妻を誘いました。子どもの身長に合わせて自転車のサドルやハンドルの位置を調整したり、タイヤに空気を入れたり、子どもの自転車を整備するのも面白かった。

 うちは、妻と寝室を別にしているんですね。「僕と犬、時々娘」「妻と子どもたち」というチームが基本です。朝早い仕事がある僕を気遣って妻がそうしてくれたんですが、家族全員で寝てみたら、これもすごく楽しかったんです。子どもたちの寝相はむちゃくちゃで、隙間を見つけて一緒に寝ようとする犬も入ってきたりして。

 子どもを預けて妻と2人でランチをしたら、これもまた楽しかった。

 これまでも僕は、子育てにかかわってはいました。忙しい会社員の方よりは家にいて、家族と時間を共有していたと思います。

 でも、ほとんど義務感でした。「妻の負担を減らしてあげないと」「早く帰らないと」「子どもと遊ばないと」。「子どもと公園行ってきて!」と妻に言われたからと公園に行っても、1ミリも楽しくないんですよね。

 一度自分に素直になってみて、妻に「No」を言うようになりました。

 「No」が言えるようになったら、「Yes」や「Want」も出てきました。

 「公園はイヤだけど、コンビニなら子どもと一緒に行くよ」と。それならば、ちょっと楽しい。子どもと一緒にお菓子を選んだりしてね。妻の公園要請も、家の外に子どもを連れ出しさえしてくれればどこだっていい場合が多いですし。

 妻に対して、どうしても引け目がありました。そもそも、自分は子どもを産んでいない。子どもと接する時間も妻と比べて少ない。そんな子育てへの負い目が、妻の要求にNoを言わなくさせていました

 無理はしない。やりたいなと思えることしかしない。今は、そんな感じですね。

 もしも妻が僕と同じように煮詰まったら、「やめたらいい」と言います。アウトソーシングしようよ、って。

 家族や夫婦関係は継続していくものなので、どこかで正解が出て、それ以降ずっとハッピーとはいかないものですよね。常に変化して対応して、変化して対応してと、柔軟に考えたい。

 …なんだか、「良い夫」的な部分をクローズアップして話をしましたけど(笑)、良い夫に戻るつもりも、目指すつもりもありません。

(取材・構成/平山ゆりの 撮影/柳沼涼子)