2月の高学年向けの年齢別特集前半では、合否にかかわらず、中学受験を終えた後の受験生親子の心のフォローや、4月以降の中学生活をスムーズに好スタートするための心得を紹介します。
第1回は、中学受験のプロ家庭教師・安浪京子先生にご自身の体験も含めてアドバイスをしていただきました。第2回の今回は、少し角度を変えて、心療内科医師の目から見た受験後の心の受け止め方に触れていきます。受験生が陥りやすいという受験特有のうつ「受験うつ」専門のクリニックを開いている「本郷赤門前クリニック」医院長の吉田たかよし先生にお話を伺いました。
【年齢別特集 小学校高学年のママ・パパ向け】
(1) 中学受験終結 結果はどうであれ子も親も心を癒やして
(2) 心療内科医が教える 中学受験直後の心の受け止め方 ←今回はココ
(3) 過保護の放任の線引きは? わが家の放課後の安全ルール
(4) “一人留守番っ子”の家庭学習はどうフォローする?
子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。
増加する受験うつ その芽が出るきっかけとなるのが中学受験

皆さんは「受験うつ」という言葉を聞いたことがありますか?
「『受験うつ』とは、年々、受験生の間に増加しているうつ病や、メンタル面の不調が招く成績の低下などを指すものです。それが最も発症しやすいのは、大学受験期ですが、『受験うつ』になると集中力が低下するため、粘り強く問題を考えることができなくなり、試験の点数が急落します。さらに、脳のワーキングメモリーと呼ばれる機能も低下し、文章の読解や数学の答えを導き出すことが困難になります」
そう話すのは、「受験うつ」専門の心療内科医師・吉田たかよし先生です。吉田先生の話によると、「受験うつ」を引き起こす原因は、家庭にあるといいます。そして、その芽が出るきっかけが中学受験にあるというのです。
それはどういうことでしょうか?
「ひとくちに“うつ”と言っても、うつは大きく2つの種類に分類されます。一つは『もうダメだ……。何をやってもうまくいかない』と自分を責めて、落ち込んでしまう、いわゆるメランコリー親和型といわれるうつ。これは社会人などによく見られるうつです。もう一つは、『自分がうまくいかないのは親のせいだ!』と人のせいにして攻撃的になるディスチミア親和型うつで、若者や子どもに多いのが特徴です。受験うつは後者が圧倒的に多いのです」
「ディスチミア親和型うつの特徴は、環境への適応が苦手な人がなりやすく、バランスのよい判断や行動ができなくなること。その症状が出やすいのが、人生でストレスが一番かかるときです。最も多いのが就職したタイミングで、次に就活中や受験勉強中が挙げられます。ただし、同じ受験でも高校受験は出にくいのです。なぜなら、内申点が重要な高校受験は、日常の過ごし方に重点が置かれるからです。一方、中学受験と大学受験は当日の試験の結果で合否が決まるため、そのプレッシャーがいやが応にも大きくなります」
「中学受験でうつになるケースは、子どもの成績に一喜一憂する親の気分に子どもが翻弄され、心理的なストレスが積み重なる形で発症するものです。むしろ、気を付けなければいけないのは、中学受験で合格した子どもで、親が間違った対応をすると、後々、大学受験の段階で受験うつになる場合が多いのです」
● 入学後、謙虚な気持ちになり、さらに努力できればいいのだが……
● 受験うつは難関校に通う子にほど多い
● 中学受験をプラスにするのもマイナスにするのも親次第
● 大事なのは、親が過剰に喜ばないこと
● 受験を終えた2~3月は、バランスの取れた勉強を体験するとてもいい機会
● 一番いいのは「実力はあるのにギリギリで不合格になってしまった子」
● 親子で東大の赤門に行くのがおすすめ。その理由は?