前例のない育休取得。周囲の反応は…

―― しかし、それまで埼玉県警では男性警察官の育休取得は前例がなかったわけですよね。切り出すのは勇気が必要だったのでは?

川嶋 そうですね。でも、私が希望を出したとき、上司や周りの人たちは、驚きはあったと思いますが、反対されるようなことはありませんでした。逆に、事情を話したら取得を勧めてくれたくらいです。それまで育休取得者がいなかったとはいえ、周囲の理解はすごくある状況だったので、とても助かりました。

―― それはやっぱり、共働き世帯が増えてきて、社会的にも男性の家事育児への参加が叫ばれるようになったことの影響でしょうか。

川嶋 そうかもしれませんね。制度自体は以前からあったのだと思いますが、世の中の風潮が変わってきたことによって、私も組織も背を押されたという面はあると思います。

―― 育休を取ることを奥様に伝えたときの反応はどうだったんですか?

川嶋 最初は「本当に取れるの?」「取って大丈夫なの?」と、半信半疑でしたね(苦笑)。でも、「取ってもらえるならうれしい」と喜んでくれました。

―― 実際に育休を取ってみて、いかがでしたか?

川嶋 とても有意義な経験でした。今、育休取得を悩んでいる人がいたら、ぜひ取ってほしいと思いますね。

 育休中は、家事全般を私がこなしました。妻には赤ちゃんの世話に集中してもらって、長女の世話や保育園の送迎、料理や洗濯などすべてやりました。次女の寝かしつけもやりましたが、私は一度寝ちゃうともう起きないので、夜中の授乳はお任せしてましたね。

 大変でしたが、充実した日々でした。色々分かりましたね。クックパッドがあれば料理はなんとかなるとか(笑)。毎日洗濯するようになって、晴れの日ってありがたかったんだなと思いました。あとは、長女と過ごす時間をしっかり取れたこともよかったです。赤ちゃんのころからあまり構ってあげられていなかったので、2人だけで出かけたりすることができて、楽しかったですね。ママがどうしても赤ちゃんにかかりきりになってしまうのですが、その寂しさを少しは軽減させてあげられたかな、と思います。

 次女のことでいうと、自分で握りこぶしを握って、不思議そうにじっと見つめているのが印象的でした。そのうちしゃぶり始めたのですが、そういう様子をじっくり眺めることは長女のときにはできなかったことなので、うれしかったです。

―― 奥さんは育休期間中について、何かおっしゃっていましたか?

川嶋 一人じゃないということがありがたかったと言っていました。長女のときは、初めての育児なのにすべて一人でやっていたので、本当に心細かったみたいで。体もそうですが、精神的な面で助けになれたようで、よかったです。

―― その後育休が明けて、川嶋さんも通常勤務に戻られたわけですね。奥様ももう職場復帰されているんですか?

川嶋 はい。今年の春、次女が1歳半くらいのタイミングで復帰しました。現在は午前9時から16時半までの時短勤務をしています。長女も最初は遠い保育園でしたが、転園して今は姉妹そろって家から自転車で5分くらいの距離の保育園に通っています。

県警本部の見学に来た小学生にパトカーの試乗体験をさせる川嶋さん(埼玉県警提供)
県警本部の見学に来た小学生にパトカーの試乗体験をさせる川嶋さん(埼玉県警提供)