風向きが変わったのは一瞬。それから真剣に数字を理解するように
ココナッツオイルが大ブームとなり、売り上げがどんどん伸びていったものの、いつまでも続くわけではありません。2015年の秋頃、急に風向きが変わったときが、今までで一番つらかったといいます。
「成長期が終わり成熟期に入るタイミングが一瞬でした。ココナッツオイル1万本、2万本を乗せた20フィートコンテナや40フィートコンテナが海の上を2個くらい移動してきていて、在庫を大量に抱えている状態で、ブームが落ち着き、風向きがガラッと変わったんです。まだ私が社長として未熟だったので、風向きの変化をきちんと察知できませんでした。そのため、一瞬でキャッシュフローがものすごく悪くなりました」
それから、資金繰り表を作り直したり、仕入れと売り上げのタイミングと数量をきちんと重ねていったりしながら、真剣に数字と向き合うことにしました。
「そもそも私自身はひとつの小さいお店を経営するくらいの能力しかない素人経営者。仕組みがなくても回ってしまうような状況で、知識がない中、何億円という数字を扱う怖さもありました。銀行に対しても、借り入れの金利はどれくらいが妥当なのか、返済期間もどれくらいが落としどころなのか、3年や5年の返済だったときに経営にどう影響するか、など当時はよく分かりませんでした」
「追いかけられるように知識を蓄え、経験を積み、今はようやく事業計画と結びつけて判断できるようになりました。混乱期から安定期に入ることができたところです。社長といっても、全然立派じゃないし、何もできない。やりながら成長していく、という人間です(笑)」
みんなが事業主である感覚を持って働いてほしい
現在は、シングルマザーの荻野さん。来年小学生になる娘さんの育児をしながら、社長業を両立させています。
「社長業を続けるためには、いかに人を信じて、仕事を振っていけるかということ。今までは、私が発案して私が指示するということが多かったので、社員から『どうしますか?』という質問が多かった。今はあえて、『どうするの?』と聞き返すようにしています」
「私は社員全員の生涯年収を上げ続けなければいけないと思っています。ずっとうちの会社にいてくれたらうれしいですが、女性の場合どこかに転職したり引っ越しをしたり、結婚・出産で働き方を変えることもある。だから、次に転職するときに、入社したときよりも時給が上がるようにしてあげないといけないと思っています。単純作業ではなく思考させる、想像力や数歩先を読むことを身に付ける、PDCAを回すなど、基本的なスキルは育てなければいけない。それがひいては私の仕事がスムーズに進むことにもつながっていきます」
そのため、社員みんなに「みんなが事業主である感覚を持って働いてほしい」ということを伝えているといいます。
「突然私が『あなたの部門だけ独立させるから頑張ってね』と言ったときに社長をできるくらいを目指してね、と言ってあります。なかなか難しいことで、人によってバラツキはあるけれど、目指す設定はそこにしています」
実は、創業後すぐにフレックス制を導入したら失敗。その経験が生かされているそう。
「全員がすごくプロフェッショナルな会社ならすぐに切り替わると思いますが、アシスタントレベルのスタッフが多かったこともあり、フレックスは単純にだらけました(笑)。ポイントは、みんながプロフェッショナル意識を持ち、ツールをきちんと使って仕事を管理し、みんなで刺激をしあう場があるということ。今はいける気がしているので、会社がもう少し大きくなったら、逆に今あるオフィスを小さくするかオフィスをなくそうと目論んでいます」

