一人暮らし歴も長く、もともと料理は得意だった。「男の料理というと、一品どーんみたいなのを想像するかもしれませんが、子どもにもちゃんと食べてもらいたいと思ったので、アプリなどで子どもの好きそうなレシピをチェックして、メインだけでなくあえ物などの小鉢も作っていました。片付けは苦手ですが料理は苦にならないですね」
同社の定時勤務時間はラッシュ時間を避けるため10時~19時に設定。そのため、普段から朝の幼稚園の送りはしていたが、いつも平日夜は子どもたちが寝てから帰宅していたという衣笠さん。この1カ月半は、子どもと長い時間接することができた。「やはりよかったです。子どもの成長を1カ月半ちゃんと見られたのは貴重な時間でした。意外と兄弟でけんかしているとかお手伝いができるほど大きくなったなあ、とかいろいろ分かりました」
息を抜ける時間帯を確保

1カ月半の間、衣笠さんが出社している時間帯は、社員の福利厚生制度を活用してベビーシッターを頼んだ。詳しくは後述するが、同社には、両立支援施策として、ベビーシッター代の50%を会社が負担する制度がある。
「最初は妻も『えー』と抵抗していましたが、実際に頼んでみると『旦那にいてもらうよりだいぶ助かる』という感想でした。使ってみてよいパターンだなと思ったのは、朝9時から来てもらうスタイル。生まれたばかりの子どもの世話は夜通し続いて大変ですが、9時になれば長女は幼稚園、真ん中の2歳の子はシッターさんに預けられると思うと頑張れる、と妻は言っていました。ふっと息を抜ける時間帯を確保できたのがよかったみたいです」
心理的なメリットもあったという。「来てもらっていたシッターさんのお一人が、保育園の園長経験のある50代女性で、我々の子育て手法を褒めてくれたり、ちょっとした悩みを相談できたりして、それもとてもよかったようです」
ネクストビートは、保育士の就職転職支援事業など子育て支援分野を中心としたライフイベント事業のほか、インバウンド事業、地方創生事業などさまざまな領域でインターネット事業を行っているが、昨年から保育士・幼稚園教諭・看護師の有資格100%のベビーシッターのマッチングサービス「キズナシッター」もスタート。今回、自社のサービスをユーザーとして利用してみたことで、使い勝手などに関して気づきを得られる利点もあったという。
衣笠さん自身はこれまで、保育施設向けの業務管理ツール「キズナコネクト」などの立ち上げに関わった経験がある。「自分たちが作ったものが、何らかの形で子どもたちの役に立つというのはやはりうれしいものです」。ヤフーやグリーなどを経て同社が4社目となる衣笠さん。「ビジネスという側面と社会貢献という側面がいいバランスで動いていると感じたから、この会社に転職しようと思いました」と振り返る。
3カ月前から社長と話し合い、目標も設定
「毎日半休」を取る前は不安もあったという。「正直、踏ん切りがつくまでは迷いもありました。現場の人と会話できる時間が減るので、現場が不安に感じないだろうか、など心配でした」
2013年に創業したばかりの同社。スピード感を持って成長している真っただ中に、最高技術責任者である衣笠さんが半休とはいえ1カ月半も休むという空白は大きくはなかったのだろうか。