中学受験では、国語や算数と比べて塾の授業時間が少なく、テストの配点も低いことから、後回しになりがちな社会。そのため、テスト前や入試直前に集中して暗記をすればなんとかなると思っている人も多いのではないでしょうか。そんな人は、中学受験で学習する4~6年生の社会のテキストを一度見てみてください。地理・歴史・公民、これだけの内容量を短期間で丸暗記しようと思ったら大変です!
「確かに社会は暗記で覚えなければならない部分もあります。でも、同じ覚えるのでも、全く興味のないことを受験のために無理やり覚えるのと、興味のあることを自分の知識として蓄積するのとでは大きな差があります」
そう話すのは、中学受験専門のプロ個別指導教室SS-1の教務主任で、長年社会を指導している馬屋原吉博先生です。馬屋原先生によると、社会が得意な子にするには、子ども時代にたくさんの実体験をさせてあげることだそう。そこで、今回は「夏のおでかけ」を通じて得られる“社会の学び方”について教えてもらいました。
低学年の子にはドカーンとインパクトのある大自然を見せる

夏休みは家族で旅行へ行く、田舎に帰省するといった予定を立てている家庭が多いと思います。小学生の子どもにとって、家族で出かける“おでかけ”はとてもワクワクするものです。大人になった皆さんの中にも、小学生の夏の思い出を今でも鮮明に覚えているという人は多いのではないでしょうか? そのくらい子どもにとっては印象に残るものです。
馬屋原先生はこう話します。
「夏休みは、お子さんを『社会』好きにする絶好のチャンスです。中学受験では、暗記力が重視されがちな社会ですが、社会が得意な子にしたいのなら、子ども時代にたくさんの実体験をさせてあげましょう。子どもは興味のないことは覚えてもすぐに忘れてしまいますが、自分の体験で得た知識は忘れません」
「社会は私たちの生活と関わる教科なので、日常の中でも学ぶことはできます。でも、せっかくの夏休みですから、いつもと違う場所でいつもと違う経験をさせてあげるといいですね。子どもはインパクトのある景色や、いつもと違う体験をすると、後々まで鮮明に覚えているものです」
では、例えばどんな場所に連れていくといいのでしょうか?
「低学年のうちは、自然や体験を軸に社会を身近に感じさせてあげるといいですね。例えば、北海道に行くなら十勝平野や富良野辺りをドライブし、“地平線”を見せてあげる。そうすると、『日本は小さな国だと思っていたけれど、実際はこんなに広いんだ!』と広さの感覚を身に付けることができます。または、芋掘りや乳搾りの体験などをさせて、農業や酪農に興味を持たせるというのもいいですね」
「東北なら夏の三大祭りがオススメです。あの賑やかさや華やかさは、小学生の子どもに大きなインパクトを与えることでしょう。この“インパクト”がいいのです。低学年のときに『ねぶた祭り』を見たことがある子だったら、4年生になって地理で青森県について学んでいるときに、『あ、これ、前に見たことがあるぞ!』と反応できます。もしかしたら、そのとき、家族で食べたリンゴのお菓子や新鮮な魚介を使ったおすしの味を思い出してくれる子もいるかもしれません。たったそれだけの体験でもしているのとしていないのとでは、授業で話を聞く姿勢が違ってきます。子どもは自分の知っていることに対しては大人が想像している以上に食いつくのです。もちろん、東北三大祭りは中学入試でも頻繁に問われます」