【当てずっぽう】「分からなかったら、何でもいいから書いておけ」はNGワード

 「問題文を読まない子」と重複する点もありますが、「当てずっぽうで答える子」もテストで点が取れません。

 「このタイプの子には共通した特徴がある」と西村先生は言います。

 「まず、答案用紙はほとんど埋まっています。問題用紙の空きスペースに、式まで書いてあることがあります。にもかかわらず、答えは×だらけで、点数は半分以下。なぜだろう? と痕跡をたどっていくと、部分部分は合っているのに、なぜこの数字が出てきたのだろう? と首をかしげる箇所があります。そこで、『この数字(式)で正しいという気持ちは何%くらいあったの?』と聞くと、ほとんどの子どもは0%とか20%とか自信がなさそうに答えるのです。つまり、正しいと思ってもいないのに、その数字を書き、その式の計算を続けているのです。それは、何とか解答用紙を埋めなければ! という不安な心理からくる行動なのだと思います」

 「しかし、そうさせてしまう原因に、実は大人たちの言葉が大きく影響を与えています。当てずっぽうの答えを書いた子どもに『なぜ、その数字を書いたの?』と聞くと、『だって、塾の先生が分からなくても空欄を作るな、何でもいいから書いておけ、って言ってたもん』という返事がくる子が少なくありません。『親から言われた』という子も多数います」

 「そして、そういう子の塾のテストを遡って調べていくと、そういう取り組み方が4年生の段階で既に始まっていることが分かります。そういう子は、例外なく問題文を読むところからいいかげんです。そして、答えを書くまでの時間が極端に短いという共通点があります」

 「ところが、4年生のうちは、この当てずっぽうの答えがたまに正解することがあります。記号問題や、算数の問題でも答えが整数であるために、意外と当たってしまうのです。この時期に、当てずっぽうでも正解になる可能性があると味をしめた子どもは、この癖からなかなか抜け出すことができなくなります。そして、5年生になって考えたり、理解したりしないと解けない問題が出てくると、当たりの確率が下がり、テストで点が取れなくなってしまうのです」

 では、どのような対策が必要なのでしょうか?

 「『しっかり考えろ!』『最後まで粘って解いてみろ!』と叱ってみたところで、改善は望めません。この手のタイプの子を立て直すには、その子が知っていることや理解していることを把握したうえで、『今、ここまでは分かっている。次にここに気づけば、先に進めるはずだ。そのためにはどんなヒントを与えるのがよいだろう』と考える手助けをするような声かけが効果的です。この場のヒントや刺激は、その子自身が気づくことができる範囲の中で、できる限り遠くに設定する必要があります。しかし、それを親がやるのは難しいかもしれません。また、大手進学塾では生徒一人ひとりをそこまで見てあげることはできませんので、中学受験に熟知した個別指導塾かプロの家庭教師に委ねるのが理想です」

 「ただし、4年生の段階であったり、そこまで常習でなかったりすれば、親でも対応はできます。算数なら『この問題では何を聞かれているの?』『何を書けば解けそうな気がする?』『その差は何だろう?』『今の式で何が分かったの?』といった質問をしながら進めていきましょう。そして、『しっかり考えれば、正解が出せる』という経験を積み重ね、自信を持たせてあげるのです。そうすれば、子ども自身が分からない問題に遭遇しても、焦ることも、諦めることもなく、『よし、まずは考えてみよう!』と立ち向かっていけるようになります」