教育環境設定コンサルタントの松永暢史さんが、この夏34年ぶりに夏合宿を行いました。東京都奥多摩の古民家での5泊6日は、「子どもが本来持っている能力を、どのように使うかを自分で開発していくための合宿」だと言います。電子機器から離れ、自然の音しか聞こえない山の奥で、太陽とともに起床し、日があるうちだけ勉強するというユニークな合宿を、松永さん自身がリポート。その第2回は、合宿における大人の立ち位置について考えます。
(上) 34年ぶりの夏合宿 囲炉裏と川遊びとBBQ
(中) 勉強に集中させるのは「川遊び」と「おにぎり」だった ←今回はココ!
(下) デジタル機器のない5泊6日 子どもは何を学ぶのか
大人たちの仕事はメシ炊きと見守り、多少のアドバイス
夏合宿の引率教師は全部で3人。
古民家オーナーのM先生(前回お話したように、この古民家を1年がかりで探し出した若手教師)と、大学生のO先生、そして私。他の「職員」は一切いない。この3人で、子どもたちの学習と食事と安全の全てを賄うわけである。
ちなみにO先生は筆者の元生徒であるが、農業高校から農大に進み、夏期富士山3000メートル山小屋で3カ月バイト、小笠原で5カ月山道工事バイト、冬期長野・宮城山頂リフト小屋でバイト、米国2カ月語学留学(これもバイト付き)、さらには大学のドローン利用地形調査研究のマナスル登山隊参加で後方支援活動と連続する猛者である。おまけに焚き火の「プロ」で、筆者の焚き火では「リーダー」として生徒の人望厚き人物である。
前回でもお話したが、この合宿で生徒たちが行うのは「自習」であり、学校宿題、塾課題、課題レポート、感想文、さらには自分で選んだ問題集を先に進めるものである。
我々教師の仕事はというと、「監視」して学習させることだ。もちろんそれなくして学習を進められるようにしたいが、基礎学力が不足する生徒には並走するアシスタントが欠かせない。教師たちは子どもの机の間を渡り歩き、集中するようにしむけたり、勉強のやり方、わからないところの解説をして回るのだ。
それ以外の時間は、ほぼメシ炊きをするのが我々の仕事である。
朝食はパンまたはご飯とおかず、9時の休憩におにぎり、12時の昼食はめん類(とおにぎり)、15時には昼食の残りのおにぎり、そして夕食は基本丼物だ。
こうしてみると、おにぎりだらけである。
というのも、合宿2日目の朝9時、昨晩残ったご飯を朝一ですばやく握ったおにぎりを10個以上出したのだが、あっという間に全部蒸発して皿だけになってしまった。炊飯器はやや大型で一度に10合炊けるので、どんどんご飯を炊いておにぎり化するのが3人の教師の主立った仕事になったのである。
