仙台市にある「食」と「森」にこだわる保育園「食と森の保育園小松島」で園長を務める四釜喜愛さんに、3~5歳子育てのポイントについて語ってもらうこの連載。最終回のテーマは「パパの子育て参加」についてです。2人の息子を育てる父親としての視点も踏まえ、語ってもらいました。
日経クロスウーマン DUAL(以下、――) コロナがきっかけでリモートワークが増え、平日の自宅にお父さんがいる光景も珍しくなくなりました。子どもと過ごす時間が増えたことは喜ばしい一方、「父と母で子育てに対する温度差を感じる」「子どもとどう過ごしていいのかわからない」など、新たな課題も見えてきました。3~5歳の子どもとお父さんの関わり方のコツはあるのでしょうか。
四釜喜愛さん:(以下、四釜) 今のDUAL世代は、日本経済が今よりも成長していた時代に育っている人が多いと思います。お父さんは忙しい会社員で夜遅くまで帰ってこず、お母さんは専業主婦、というような。そもそもお父さんと遊んだ経験があまりない、という人も多いのではないでしょうか。昭和のお父さん像が頭にあると、弱みを見せない、「何でもできて尊敬されるお父さん」であらねばと、つい思ってしまうかもしれません。
僕はむしろ、大人が下手な面を見せるほうが、子どもの成長を促すと思っています。僕の場合は、絵を描くのがすごく苦手なんですね。5歳児クラスの担任をしていた頃、それでも何とか自分で絵を描いて紙芝居をつくり、園の子どもたちに見せていたんです。そうしたら年長クラスの女の子が2人、後ろのほうでクスクス笑いながら、「先生より私たちのほうがうまいよね」って言っていて。そこで、「そうだよ、君たちのほうがうまいし、面白いものが描けるんじゃないの」って2人に言ったところ、2人ともやる気になってくれて、そこから、一緒に紙芝居を描くようになりました。1つだけではなくいくつもいくつも、自分たちでストーリーを考えて絵を描いて。
その子たちは、卒園してからも学童保育で、みんなが楽しめるようにと、仕掛け絵本などをつくり続けたそうです。大人が下手なところを見せるくらいのほうが、子どもがチャレンジするハードルがグッと低くなるということですね。
―― なるほど。ついつい、「大人自身がうまいお手本を見せて、子どもに教えなくては」と考えてしまいますが、逆なのですね。
四釜 例えばサッカーが得意なお父さんだったりすると、一緒に楽しむどころか、「もっとこうしなさい」「違う、そうじゃない」などと、つい指導的な態度になってしまうこともあると思うんです。そして、それを楽しめる子どもだったらいいけれど、そうじゃなかったら、きっとサッカー自体が嫌になってしまいますよね。大人自身の「好き」に引き込むのではなく、まずは子ども自身が何に興味を持っているかを知ること。そして、親は下手でも苦手でもいいから、それを一緒に面白がることで、子どもは伸びていくのだと思います。

