古荘:そうです。子どもにはどう見えていて、どう聞こえているのかに注意を払うことはとても大切ですね。
小島:その話で思い出しましたが、私が通っていた公立小学校に、写生の時間に空を黄色く塗った同級生がいたんです。教師はそれを叱りました。空は青色なのに、黄色で塗るのはおかしいと。
古荘:その子は本当に青い空を黄色ととらえていた可能性があると思います。強い光を浴びたとき、過敏に反応して痛覚を訴える子どもがいます。そのような場合、脳では光を黄色にとらえるといった現象が起こりえるからです。
―― なるほど、そういった可能性もあるのであれば、「空は青色なんだ」と決めつけて、青色で塗らないことを叱る行為は、ますます許されるものではないと言えそうですね。
小島:私は、子どもが自分の理解の範囲を超えた反応をしたときというのは、その子の個性を知る大きなチャンスだと考えています。教師が「どうして空を黄色に塗ったの?」と尋ねていれば、その児童のことをよく理解できたはずではないかと思います。
教育の世界では、子どもにどう「入力」するかばかりに目が向けられがちですが、本当に大切なのは、その子が何を「出力」するかに注意を傾けることではないかと感じていまして……。古荘先生、いかがでしょうか。
古荘:おっしゃる通りだと思います。自分が生んだといっても子どもは別々の人間なので、子どもをよく観察し、その子に応じた教育を与えるよう努めることが何より大切ですね。
取材・文/本庄葉子 写真/鈴木愛子 ヘアメイク(小島さん)/中台朱美
【お知らせ】
小島慶子さんが日本とパースを数週間おきに行き来する生活の中で感じた、夫婦や子ども、社会、働くことへの思いを綴ったエッセイ集『仕事と子育てが大変すぎてリアルに泣いているママたちへ!』と、教育虐待の定義や「教育熱心」との線引き、親の「正しい子どもへの関わり方」などについてまとめた書籍『中学受験させる親必読!「勉強しなさい!」エスカレートすれば教育虐待』(共に詳細は前ページ下の囲み参照)が好評発売中です。どちらも保存版として自宅の書棚に置いていただき、子育てで迷ったり悩んだりするたびに読み返す子育てバイブルとしてご活用ください。
エッセイスト、タレント
東京大学大学院情報学環客員研究員
昭和女子大学現代ビジネス研究所特別研究員

小児科医、小児精神科医、医学博士
青山学院大学教育人間科学部教授
