本連載では、学校への取材経験が豊富な教育ライターの佐藤智さんが、現役の先生たちに保護者が気になることを聞いていきます。連載第11回のテーマは「学校の安全」について。「――小学校へ不審者が侵入し…」といったニュースを耳にして、わが子の学校は大丈夫かしら? と不安になる保護者も多いでしょう。学校や先生たちは、不審者への防犯対策をどのように実施しているのでしょうか。保護者会では出てこない先生のホンネや小学校のリアルな事情を聞いていきます。
【親が知りたいことを直撃! 先生のホンネ 学校のリアル】
これまでのラインアップ
■いじめた側を出席停止にしないのはなぜ? 先生の本音は
■探究学習は調べ学習と違う? 適当にやる子ヘの指導法
■通知表はどのようにつけている? カギは3つの「観点」
■新しい担任に不安が 前の担任に相談していい?
■積み上げ教科の算数と国語 つまずいたときの対策は?
■学校のデジタル化 意外な効果や先生の戸惑いとは
■コロナ下で子どもの笑顔減ったことも先生の心の負担に
■荒れるクラスに共通点 学級崩壊の予防と対策
■先生が多忙過ぎる理由は? 意外な仕事や改善の状況
■小学校で進む「教科担任制」の導入 先生の負担感は?
B先生 栃木県の公立小学校に勤務。新卒で先生になり7年目。
C先生 神奈川県の公立小学校に勤務。新卒で先生になり10年目。
各校で不審者の侵入を防ぐ対策が練られている
保護者が子どもの頃と比べると、学校の防犯対策は進化してきているように感じる。それでも、学校への不審者侵入など物騒な事件を見聞きすると不安になってしまうものだ。では、学校では具体的にどのような防犯対策が練られているのだろうか。東京都の公立小学校に勤務するA先生は不審者の侵入を防ぐ設備や訓練には各校で力を注いでいると語る。
「子どもたちが在校中は2つある校門の鍵は必ずかけられており、入校するにはインターホンで名乗る必要があります。校内に入ると保護者は、あらかじめ配布されている学年ごとに色分けされた保護者証を首から提げることになっています。それ以外の来校者は、受付窓口で用件を伝えて来校証をもらわなければ校内には入ることはできません。さらに私が勤務する学校には警備員が常駐していて、2カ所の門を行き来しながら、校舎周辺を警備しています」
学校警備員については現状は自治体ごとに配置するか否かの考え方が異なっている。ただ、警備員がいないケースであっても、侵入者を防ぐ手厚い対策が講じられている。栃木県の公立小学校に勤務するB先生は学校の防犯設備の工夫についてこう続ける。
「校舎への出入り口は1つの昇降口に限定し、すべての人の出入りをチェックしやすいようにしています。また、職員室は校庭の全貌を見やすいように、配置を工夫したり窓を大きめに取ったりしているんです。死角になる場所に、防犯カメラを設置する学校も増えています」
校舎の整備については、神奈川県の公立小学校に勤務するC先生もこう工夫を語る。
「昔は、校庭の周囲をぐるりと樹木が生い茂っている学校がよくありました。しかし、今は死角ができてしまうことを懸念して、きちんと剪定(せんてい)して整備している学校が多いです。また、校舎の敷地内だけでなく、接している敷地に死角があることもリスクになります。そのため敷地の外を照らす外灯を設置したほうがいいのではと勤務している学校で議題となったこともありました」
