さまざまな分野の女性リーダーに、自分にとっての「働く」「育てる」を聞くこの連載。スウェーデン発の家具販売大手イケア・ジャパンを率いるへレン・フォン・ライス社長へのインタビュー後編では、女性リーダー育成の取り組みや男性育休について、日本の働く女性たちへのエールをお届けします。
(前編)家族とキャリアを支え続けてくれる夫に感謝

明確なゴール設定とコミュニケーションを重視
―― イケア・ジャパンでは女性管理職の割合が50%を超えます。女性も働きやすい職場にする取り組みで大切にしていることは何ですか?
ヘレン・フォン・ライスさん(以下、ヘレン) 「会議室の中には女性を3人入れる」ということを心がけています。話し合いの場に女性が1人いるだけだと、他に男性が5~6人集まればその女性の声は埋もれてしまう。変化を起こすことにはつながりません。女性が2人でも「two girls」といった程度の認識で終わってしまいますから、まだ弱いと思います。3人いて初めて、女性の視点からの意見が通るようになるというのが私の実感です。
―― 意識的に女性をリーダーに登用しているのですか?
ヘレン そうです。固定のメンバーが集まるような会議では、男性が3人いれば女性も必ず3人登用します。日本法人の経営メンバーは現在、9人中5人が女性です。そのようにすることで、管理職のポジションにも女性が就きやすくなります。女性にはコミュニケーションスキルが高い人が多く、仕事でユニークな視点をもたらしてくれます。さまざまな問題を解決するために必要な「つながりを築く力」も優れていると思います。期待以上のレベルでやり遂げてくれる人材が多いので、企業にとっては未来をつくる上で頼りになる存在です。
能力を発揮しやすい環境づくりとして、明確なゴールを設定することを重要視しています。ゴールを据えることで、到達に向かう過程が個人の成長につながりますし、それが評価につながり、報酬に対しての納得感やさらなる目標設定ができるようになります。
管理職に登用してからのコミュニケーションも重視していて、それぞれの女性リーダーがどんなサポートを必要としているかについて話し合う機会を設けています。子育て中の女性は、母としての役割も担っていますから、会社で闘っているだけでなく、家庭での闘いもあるわけです。会社として彼女たち自身の悩みを聞く機会を設け、何を必要としているのか個別に理解した上でサポートしていく姿勢を大切にしています。