嫁ぎ先の愛知県で孤独な子育てを強いられ、毎日ピリピリし通しだったことです。「裕喜のせき一つで『風邪?』と不安になりました。もっとおおらかに構えていれば、息子も不安を強めずにすんだかもしれません」
真紀子さん自身、暴力を振るう父親を長年恨み続け「親に傷つけられた子どもの苦しみはよく分かる」といいます。一方で、子育てする親の必死さも、身をもって知っています。
親子も他人。突き放せれば楽になる
「ひきこもりの子どもは親の仕打ちを恨んでいるかもしれませんが、多くの場合、親も親なりに一生懸命です。難しいことではありますが、親子がお互いを『自分とは別人』だと割り切り、相手の立場を想像できるようになれば……」という、願いも口にしました。
また、ひきこもりの子を持つ親は、しばしば支援者らに「わが子に笑ってほしいだけなんです」と訴えます。ただ、ささやかに聞こえるそんな願いについて、真紀子さんは「子どもにとってかなりの『圧』では」と苦笑します。「母親自身が笑顔を失っているときに、子どもに『笑ってほしい』と無理難題を要求してはいけません。まずは母親が笑うことで、周囲を巻き込んでいければいいですね」

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取材・文/有馬知子 イメージ写真/PIXTA