休校中の公立小・中学校の対応は各自治体に委ねられ、その内容には少なからず差が生じてしまいました。そんな中、オンライン授業や学校との双方向コミュニケーションなどの仕組みをいち早く整え、話題になったのが東京都渋谷区です。渋谷区がスピード感を持って教育のICT化を推進できた背景には何があったのでしょうか。14歳、10歳、5歳の3人の女の子のパパで、2015年から渋谷区長を務める長谷部健さん(48歳)にお話を伺いました。2回に分けてお届けします。
<長谷部 健・渋谷区長インタビュー>
上編 休校対応で注目の渋谷区長 ICT教育への思い ←今回はココ
下編 渋谷区長 コロナICT対応を「人育てにつなげる」
一人1台、通信可のタブレットを配布済みだった
編集部(以下、――) 渋谷区の小中学校は、休校中、クラウドを活用して教師やクラスメートとの双方向のコミュニケーションを図る仕組みを整えたり、サイバーエージェントと組んでインターネットテレビ&ビデオサービス「ABEMA」を活用した学習動画を配信したりと、いち早くICT教育を推進してきました。公立の小中学校でこれほど充実したオンライン学習が行える自治体は珍しいように思います。なぜ迅速に対応できたのでしょうか?

長谷部健・渋谷区長(以下、敬称略) 特に休校対応で先陣を切ったつもりも、それを目指したわけでもないんです。渋谷区では既に3年前から区立の小中学校の全児童・生徒・教職員に、LTE回線に接続する機能を持ったタブレットを配布し、タブレットを使用した授業に取り組んできました。「一人1台、通信できるタブレットを所有している」という環境が既に整っていたというのが大きいと思います。
―― 今回のコロナのような緊急事態を想定して、タブレットを配布してきたのでしょうか?
長谷部 まさか! 台風などで数日間学校を閉鎖する、といった程度の事態は想定していましたが、何カ月も緊急事態が続くことになるとは予想だにしてませんでした。





―― そもそもなぜ、ICT教育を推進しようと考えたのですか?