休校中の公立小・中学校の対応は各自治体に委ねられ、その内容には少なからず差が生じてしまいました。そんな中、オンライン授業や学校との双方向コミュニケーションなどの仕組みをいち早く整え、話題になったのが東京都渋谷区です。渋谷区がスピード感を持って教育のICT化を推進できた背景には何があったのでしょうか。14歳、10歳、5歳の3人の女の子のパパで、2015年から渋谷区長を務める長谷部健さん(48歳)にお話を伺いました。2回に分けてお届けします。
<長谷部 健・渋谷区長インタビュー>
上編 休校対応で注目の渋谷区長 ICT教育への思い
下編 渋谷区長 コロナICT対応を「人育てにつなげる」 ←今回はココ
他区に比べて決して裕福な区ではないのです
編集部(以下、――) 財源に余裕がなくても、アイデアさえあればできることはあるということですが、渋谷区には大手企業が集まっていて法人税が多く、そもそも財源が潤沢にあるのでは? だからこそ、ここまで休校対応にもコストを投じることができたのはないでしょうか。
長谷部健・渋谷区長(以下、敬称略) よく勘違いされますが、違うのです。区民税はそれぞれの区の収入になります。ただ、法人税は国税ですし、固定資産税や法人住民税は、いったん東京都が徴収し、23区に配分されます。区内に大手企業が多いからといって、それに応じた額の交付金が配分されるわけではありません。交付金まで含めて見てみると、渋谷区は、他区に比べて決して裕福な区ではないのです。これは私も、2003年に渋谷区の区議会議員になるまで知らなかったことなのですが。
―― そうなんですね。税収入で潤っているから、教育のICT化に力を入れたり、渋谷区のLINEの公式アカウントを作って、問い合わせにAI(人口知能)が自動応答する仕組みをつくるなどといった先進的な施策を実行できるのだと思っていました。
長谷部 もしそうなら、タブレットを小中学生に配布する段階でそもそも迷いません(笑)。LINEで公式アカウントを作ったのも、LINEとの協業関係があったからこそです。
