「子ども庁」の構想が話題になったものの、保育園と幼稚園を一元化する抜本改革はなかなか進まない日本。フィンランドでは2013年から保育園が教育省の管轄に移り、国の幼児教育の指針に基づいた保育が行われています。勉強よりも自由な遊びが重視され、「自分で考えて、何かを変えようと行動する」ことを目指すその内容は、「起業家精神を養う保育」とも言われます。同国でスタートアップが成長する背景には、幼いころの保育環境も影響しているのかもしれません。東京・港区にあるフィンランド大使館で働く堀内都喜子さんがレポートします。
4人に1人しか保育園に入れなかった時代も
フィンランドの保育園は朝食から始まります。8時前に連れていけばオートミールなどを出してもらえるので、子どもを起こして連れていくだけ。もう少し家でゆっくりしたければ、朝食後に連れていくことも可能です。朝食と昼食は保育料に含まれます。
園での1日は外遊びが中心です。どこも園庭は広く、近くに公園や森もあるので、午前も午後も外で遊んだり、森に出かけたりします。森では植物の名前や、岩や雪の上の歩き方や注意点も学びます。多少の雨や雪、氷点下10度ぐらいまでならしっかり防寒対策をして外に出ます。毎日泥だらけになるので、さまざまな防水、防寒の服は欠かせません。


図画工作にも力を入れていて熱心に取り組みますが、皆が同じように作る必要はなく、とても自由。他に歌を歌ったり、お昼寝の時間があったりするところは日本と変わりません。最近はYouTube動画を見たり、子ども用タブレットで教育ゲームやアプリを楽しんだりするところも出ています。
保育園と家庭の連絡は、電子連絡帳を主に使います。出欠や行事、持ち物など双方向に伝えたいことは携帯やPCからシステムを通じて行われ、他に何かあれば送り迎えの時に直接、先生と話します。
フィンランドにもかつては待機児童の問題がありました。女性の社会進出が進むにつれて深刻な保育園不足に陥り、1973年に各自治体に保育園整備の義務を明記した保育園法ができました。それでもなかなか問題は解消せず、当時は4人に1人しか保育園に入れなかったといいます。