妊娠中の菜々は夫の拓也とともに、元同期の男女数人を新居に招待。パーティーは盛り上がり、喜ぶ菜々だったが、同期たちが帰った後、拓也は人が変わったように不機嫌になる。混乱する菜々の脳裏に浮かんだのは、パーティーの最中に拓也から言われた一言だった。出会った当時は、こうではなかったのに――。
【これまでのお話】
プロローグ 新連載・小説「ミドルノート」同期の男女の生き方描く
第1話 新居に同期が集まった夜
第2話 同期会解散後、夫の口から出た思わぬ一言
第3話 妻を無視する夫 「ほんと鈍感だろ、こいつ」←今回はココ
三芳拓也…菜々の同期で夫。
<同期入社のメンバー>
江原愛美…菜々より一足早く産休・育休を経験したワーキングマザー
板倉麻衣…5年ほどで会社を辞め、WEBライターとして活動中
「何怒ってるの? わたし、なんか言ったっけ」
「こういうの、もうやめような」
明るい気分で戻ってきた菜々は、拓也の言葉にぽかんとした。
さっき笑顔で、片付けは俺がやっておくから皆を見送ってきてよ、と言ってくれた拓也が、居間のソファにだらっと座ったまま、不機嫌な顔で足を組んでいる。その真正面にはテレビがついていて、スポーツニュースが流れていた。
「何何~、拓也くん、どうしたの」
能天気を装い、笑いながら聞いた。
拓也は返事をしなかった。
無視、か。菜々は下くちびるを噛む。拓也には時々こういうことがある。機嫌が悪くなると、口をきいてくれなくなるのだ。

「何怒ってるの? わたし、なんか言ったっけ」
尋ねながら、ふいに食事中に皆の前で拓也に言われた言葉がよみがえった。
――ほんと鈍感だろ、こいつ。
と、拓也が言ったのだ。妻を小ばかにするこの言葉に、場は盛り上がり、菜々も一緒になって笑えた。
なんで笑えたのだろう。