子どものためにも夫婦が笑顔でいよう

 今回のコロナウイルスの感染拡大により、林田家では17歳の次男が進路を考え直したのだとか。今までは「自分は理系が得意だから」という程度の志望動機でしたが、「こんなに危機的な状況になるなら、自分が本当にやりたいことをやったほうがいい」と目覚めたそうです。

 「子どもたちでさえ変化を感じているのだから、大人も変わらなくては。今までどおりに働く、家事をするなどの『doing』ではなく、自分はこれから何がしたいのかの『will do』を考えて。そして夫婦が笑顔でいられたら、子どもたちも安心できるはずです」

 最後に林田さんが「子どもが憧れる笑顔の夫婦6カ条」を教えてくれました(以下、「 」は林田さんのコメントです)。

(1)恋人でいよう
「相手への興味と関心を失わないで。スキンシップやデートなど二人の時間を大切にしましょう」

(2)個人でいよう
「夫婦は他人ですから、違いを楽しむ。お互いに一人の時間を持てるように気遣いましょう。相手が自分とは違う個人だと認識すれば、言わなくても分かるだろう、察してほしい、というミスコミュニケーションも起こりにくくなりますよ」

(3)親友でいよう
「お互いを認め合い、良いライバルとして高め合える関係を。学生時代の親友とはくだらないことで笑い合いますよね。夫婦も業務連絡だけではなく、雑談を楽しんで」

(4)戦友でいよう
「今はまさにコロナの影響で、多くの夫婦が戦友のような状態なのでは。人生のチャレンジ期、困難期を乗り越えるためにお互いをフォローし合いましょう。二人で無理な場合は、抱え込まずに外にヘルプを」

(5)味方でいよう
「相手が大変な時にはサポートを。世界中のすべてを敵に回しても、最後に味方になってくれる人がいるというのは、ものすごく心強いことです」

(6)相方でいよう
「どんな大変なことも後から振り返れば、ワッハッハと笑い合えるネタになります。夫婦の笑顔で、子どもも笑顔にしてしまいましょう」

 ちなみのこの6カ条、「全部クリアする必要はないんです」と林田さんはいいます。

 「夫婦の関係性は場所や時間、ライフステージによって変化します。例えば、わが家では今は子どもたちの学費を稼ぐ『戦友』の時期ですが、ほかの家庭ではお互いがキャリアを積む『個人』の時期かもしれません。これまで密に夫婦間のコミュニケーションをとっていないと最初は照れくさいかもしれませんが、まずは自分から一歩踏み出してみましょう。うまくできなくても、もう一度やってみる。そのうちに『あれっ、なんかいいかも』という小さな変化が積み重なり、夫婦関係が改善しますよ

 次回はイベント第5回目の「子どもたちはどうする?」をご紹介します。

構成/三浦香代子 イメージカット/鈴木愛子

熊野英一
子育て支援/ボン・ヴォヤージュ有栖川 代表
1972年フランス・パリ生まれ。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。メルセデス・ベンツ日本にて勤務後、米国でMBA取得。イーライ・リリー、コティを経て、2007年に(株)子育て支援を創業。アドラー心理学に基づいた人材育成に関する企業研修や、子育て、働き方、介護、夫婦関係などのセミナー・講演会を手掛ける。『育自の教科書』(アルテ)『家族を笑顔にしたいパパのための本』(小学館クリエイティブ)など著書や取材記事多数。日本アドラー心理学会/日本個人心理学会 正会員。日経DUALの過去の連載はこちら
杉山錠士
子育て情報サイト「パパコミ」編集長
兼業主夫放送作家
1976年生まれ。日本大学芸術学部在学中から放送作家としての活動を始める。長女が年長になるタイミングで仕事を減らして「兼業主夫」へ。家庭での担当は「夕食」「トイレ掃除」「ふろ掃除」その他、洗濯や掃除全般。NPO法人「イクメンクラブ」社員、NPO法人ファザーリング・ジャパン会員。オーナーを務める「旗の台BAL Cero」では地域のパパをはじめパパ友たちが日々集っている。著書に『新ニッポンの父ちゃん~兼業主夫ですが、なにか?~』
林田香織
ワンダライフLLP代表
日米の両方で出産と子育てを経験。2008年に帰国し、翌年に独立。パートナーシップ&ペアレンティングアドバイザーとして、子育てと仕事の両立や夫婦関係に悩むママ&パパをサポート。出会うママ&パパは年間3000人以上。企業や自治体主催の両立支援や育休復帰、管理職向けセミナーなどに登壇。お茶の水女子大学修士(家族社会学)、米国Brigham Young University 修士(言語教育学)。NPO法人ファザーリング・ジャパン理事、NPO法人コヂカラ・ニッポン理事、NPO法人いちかわ子育てネットワーク副代表理事。3人の男児の母。