自分と相手の境界線を意識する
―― ウィズコロナの暮らしが長くなり、どう行動するかなどの違いが次第に出てきています。ママ友・パパ友同士でも考え方の違いからコミュニケーションが難しいということがあるようです。例えば、「家にランチに来ない?」「一緒に遊びに行かない?」と誘われても、「うちはまだ様子を見よう」と思っている場合など、どうやって自分の思いを伝えたらよいでしょうか。
大野 相手の考え方が何かに反しているわけではないので、悩みますね。でも、このような場合は、「私はこういう考えなので、今はまだ行かないようにしている」と言えばOKです。ポイントは、自分を主語にした「アイ(I)メッセージ」で、自分のことだけを伝えるということです。
そこに「なぜあなたはそう思わないの? (あなたの)その考え方はないんじゃない?」と「ユー(You)メッセージ」を付け加えてしまうと、相手は「なぜ私の考え方に口を出されないといけないのか」と不快に思います。
逆の立場でも同じです。誘いを断られたときに「そんなふうに考えていると(あなたは)疲れない?」などと「ユー(You)メッセージ」で反応すると、相手はカチンときてしまうかもしれません。場合によっては、「私もあなたみたいに気楽な考え方になれるといいんだけど」とイヤミにも取れる答えが返ってきて、険悪な雰囲気になってしまいます。
どれも何気ない一言ですが、友達付き合いで相手の価値観を引き合いに出すのはNGです。自分の知り得た知識を披露するなどして、相手の考えや行動を変えようとするのもやめましょう。人は共通点が多いと、同じ考えを持ったり感じ方をしたりするのが当然と思いがちになり、無意識に相手をコントロールしようとするところがあります。住んでいる地域、保育園、子どもの年齢などに共通点が多いママ友・パパ友という関係において、そこは陥りやすいところなので、要注意です。
―― 保育園で知り合った場合、「働いている」という点からお互いの大変さも分かり合えて、親近感から仲良くなることが多いですね。
大野 共通点が多い人たちの「分かるよね」という同調意識は、グループに属して安心感を求めることから生まれます。家族同士で遊ぶのは楽しいし、いいことですが、その同調意識が行き過ぎると、相手に常に賛同してほしいと依存する気持ちが生まれてしまいます。
ここで注意したいのが、人は共通点が多いほど、相手に自分とちょっとした違いがあると許せなくなることです。それは、相手と自分の境界線が曖昧になっているから。依存している相手から共感を得られなかったときに裏切られた気持ちになり、依存が攻撃に変わってしまうのです。
しかし本来、相手と自分は別の人格なのですから、考え方や行動が完全に同じでなくて当たり前です。日ごろ仲の良い関係であっても「自分は自分、相手は相手」と思い、ある程度距離感を持って付き合うようにしましょう。
今は特に、新型コロナウイルスの影響で不安感が強い時期なので、誰かに依存していると、振り回されてストレスを抱えやすくなります。「周りはこう言っているけれど、自分はどう考えるか」を支える自分軸をしっかり持つことが大切です。
