行政が積極的に介在して、再発防止に努めて
私が共同代表を務めるWarisでは、ビジネス系フリーランスのマッチングサービスとして、フリーランスと企業とを結びつける事業を行っています。こうしたマッチングのビジネスモデルにおいて非常に大切であり、注意を払わなければならないポイントの一つが、登録段階でのスクリーニングです。そのため、登録後に紹介できそうなお仕事がある場合、キャリアカウンセラーによる1時間ほどの面談を必ず受けてもらいます。その段階で履歴書・職務経歴書を提出してもらったうえで保有するスキルや経験を確認します。
経験内容がお仕事内容とマッチしなかったり、コミュニケーションに問題があったりする場合は、企業におつなぎするのは難しいですね。登録者の紹介時には、登録者、企業、当社の営業も交えた3者での面談の場を設けるようにしています。そうした段階を経て、双方の納得が得られて初めて、マッチング成立となります。成立後も、キャリアカウンセラーや営業担当者が、登録者と企業の両方から継続的にヒアリングを行い、細かな要望などを把握するようにしています。
ましてや子どもの命を預かるベビーシッターのマッチングにおいては、仲介業者は安全性を確保するために、そうしたスクリーニングの手間を決して省いてはならないと思います。
キッズラインに登録しているシッターさんの中には、完全なフリーランスとして活動している方以外に、保育園や幼稚園などに勤めながら副業として仕事を受けている方もいると思われます。こうした新しい働き方を可能にするCtoCのプラットフォームが閉ざされてほしくはありません。そこで、行政にも強くお願いしたいことがあります。
イギリス在住の私の友人が教えてくれたのですが、イギリスでは子ども関係の仕事に就く場合に、行政が発行した無犯罪証明書(犯罪歴がないことを示す証明書)を取得して、雇用主やマッチングのプラットフォーム運営会社などに提出することを義務付けているそうです。ぜひ、行政でバックグラウンドチェックをサポートするような仕組みを作ってもらいたいです。こうした証明書を提出するステップを踏むことで、犯罪の抑止効果も期待できるのではないでしょうか。
日本でも、今回のことで心を痛めたベビーシッターさんたちが有志で立ち上げた「無犯罪証明書を求める現場ベビーシッターの会」が、署名活動をスタートしました。現段階では、事業者側は、登録者の名前をインターネット上でリサーチして、何か問題のある情報が出てこないか、といった程度の確認作業しかするすべがありません。基本的には、本人の申告内容を信じることしかできないのです。
2件目は、休園・休校により親が在宅勤務をしながら子どもの面倒を見なければいけない、という特殊な状況の中で発生してしまいました。言うまでもありませんが、在宅で仕事をしているからといって、小さい子どもの面倒をしっかり見ながら仕事上の責任を全うする、というのは簡単ではありません。当社はママ・パパがスタッフの大半を占めますが、同じように在宅勤務中にベビーシッターに頼らざるを得ないことがあった、という声が上がってきています。行政がこの問題に積極的に介在して、再発防止に努めてもらいたいと思います。

取材・文/蓬莱明子 イメージ写真/PIXTA
