蓑手:そうですね。その形にすると、何に取り組むかを自分で決めたという「自己決定」はできると思います。

しかし、「国語と算数と英語。この中から何でも好きなものを選んで、どれだけでも勉強していいよ」と、親や先生がコンテンツを勉強の枠に絞ってしまうと、子どもにとっては、「ピーマンとキャベツとニンジン。この中から何でも好きなものを食べていいよ」と言われるような感じかもしれません(笑)。
食べたいのはハンバーグなのに、野菜をどれだけでも食べてもいいよと言われて、果たして子どもはうれしいでしょうか。
できれば、やはり制限はかけずに「子ども自身が本当に好きなもの」を選ばせてあげたほうがいいです。なぜなら、「本当に好きなものだからこそ、本気の工夫が生まれる」と思うからです。好きなものに取り組んでいるときのほうが、良質なPDCAサイクルが回せると思います。
「好きなことに取り組む」だけでは足りない?
―― 確かに。大人でも、好きな仕事と、やらされている仕事とでは、どれだけ新しい工夫が生まれたかにおいては雲泥の差が生じますね。人事の世界でも、働く人の「したい」と「業務」をうまくマッチングさせることが、生産性を高めるための重要ポイントとして認識されてきています。
「好き」というエネルギーはすごいですね。「好きなこと」であれば、放っておいても、子ども自身が自走してPDCAを回し、どんどん深めていけるものですか。
蓑手:実は「好きなことに取り組んでいる」だけでは、ちょっと足りないんです。アクティブ・ラーナーの育成に必要なもう一つの要素は、「シェア」と「他者承認」です。つまり、自分のしたことを誰かに見せて、誰かから「いいね」をもらうことですね。
休校期間中のオンライン自習室の取り組み(前編参照)の中で、僕ら教員は、子どもたちが投稿してくれるその日の取り組み記録(目標と振り返り)に対して、「いいね」や「次はこんなことをしてみたらどうか?」などコメントをしました。
教員だけでなく、子どもたち同士の「いいね」も活発に行われますので、それらが、各自の継続モチベーションになっていくんですよね。
―― まるで、SNSのようですね。先生や友達から、自分の作品などさまざまな成果物に「いいね」がもらえたら、純粋にうれしいだろうし、もっと続けたいという気持ちになりそうですね。
アクティブ・ラーナー育成に必要なこと
(1)子どもたちの好きなことをさせる
(2)シェア&他者承認の機会を用意する
ICTによって「学校の学びの質」は劇的に進化する
蓑手:「子どもたち全員の作品や成果物などをクラス全体でシェアする」というのは、今までもわれわれ教員はしたかったことです。