子どもと生活を楽しむだけでいい
【内田さんからのアドバイス】
忙しい毎日ですよね。「よりよい子育てとは」なんて、難しく考える必要はないのですよ。子どもと一緒に日々の生活を楽しむ、それが一番です。
子どもは、自分とは別の人格をもった存在です。自分が面白いと思うことと、子どもが面白いと思うことは違います。それを、子どもから学んでみるのはどうでしょうか。「そういう考え方なんだ!」と面白がりながら、子どもと一緒に大人も育っていく。それだけで子どもにとっては十分です。
それから、3H「ほめる、はげます、(視野を)ひろげる」の声がけは「叱らない」ことを意味するのではありません。交通ルールを守らなかったときなど、「危ないから車が来るかどうかよく見て渡ろうね」「信号が青になったら渡ろうね」などと、親がお子さんに言って聞かせなければならない場面はありますよね。

ただ、よほど緊急の場合を除いて、「ダメ!」などと声の強さで威圧するのはおすすめしません。「今、周りを見ないで歩道に出ようとしていたよ。もし自転車が来ていたら危なかったよね、気をつけよう」といった具合に、禁止や命令ではなく、提案の形で少しずつ理解させるのです。いつも厳しく叱って、「ほら、前にも言ったでしょう!」と怒っても、子どもは覚えていないんです。
もしも保育園や学校で友達に手を出してしまったら、「友達もいやだったよね、悔しかったと思うよ。○○ちゃんも、そうされたらいやだよね」と落ち着いて話してみてください。5歳くらいになれば、親の声がけに愛情があって、子どもの人格を尊重する言い方であれば、伝わると思います。
日常生活の中でも、子どもにできるだけ「考える余地」を与えてあげましょう。例えば、寒いのに子どもが靴下を履かずに走り回っているとき、「靴下、履かないとだめでしょ!」とトップダウンできつく言うと、子どもに考える余地を与えないことになります。「足が冷たくなるから、靴下を履こうね」と言ってみてください。それでも「イヤだ、履かない」というのだったら……しばらくそのままにしておきましょう(笑)。やっぱり足が冷たくなって「お母さん(お父さん)が言ったとおりにすればよかった」と思うかもしれません。そうやって子どもは学んでいくものです。
そしてもし、子どもが何か一つでもできるようになったら、そこを見逃さずに、「すごい、できるんだね」と、ごく自然に声がけをしてあげましょう。子どもを一人前の人として敬意を持った声がけをしてあげるのです。
これらは何も、特別なことではありません。子どもはすぐには変わりませんが、その成長の過程をじっくり楽しんでみてはいかがでしょうか。疲れてしまうほど頑張らないで、子どもと一緒に生活を楽しむことを大切にしてくださいね。
取材・文/西山美紀 イメージカット/PIXTA
環太平洋大学教授、お茶の水女子大学名誉教授

『「頭がいい子」が育つ家庭の8つの習慣』
(日経DUAL編、1540円、日経BP刊)

自分から学ぶ意欲のある子を育てるために、親はどのように子と関わればよいのでしょうか。専門家・著名人たち9人への取材から見えてきたのは、子の主体性を尊重し、親が自分の方針や思いを押しつけない姿。「勉強しなさい」と叱ったり、低年齢から塾に通わせたりするのではなく、夢中になれる体験や遊びを通して、子ども自身の「やりたい」「学びたい」という気持ちを自然に引き出すというものでした。具体的なノウハウを「8つの習慣」として紹介します。
【主な内容】
プロローグ:「勉強しなさい!」よりも大切な親の関わり方
お茶の水女子大学名誉教授 内田伸子さん
・抽象的な思考の土台となるのは、遊びを通じた「実体験」
・幼稚園卒と保育園卒で学力に差は出るのか
習慣1:自由な遊びと体験で「想像力」を伸ばす
生物学者・青山学院大学教授 福岡伸一さん
・回り道にこそ豊かな学びがある
・中学受験も、頑張り体験の1つ
習慣2:子どもの「やりたい」気持ちを止めない
東大卒タレントで2児の母 髙田万由子さん
・子どもが見つけた「好きなこと」には口出ししない
・失敗から学ばせる ・積極的に外遊びをさせる
習慣3:正解を与えない
京大卒の高学歴芸人 ロザン・宇治原史規さん
・問題が解けたら「わあ! すごいね」
・宿題のやり方を、あえて子どもに教えてもらう
習慣4:子ども自身に考えさせ、決めさせる ~非認知能力を高める~
日本人初の「全米最優秀女子高生」の母 ボーク重子さん
・小学校3年生まで「教科書も宿題もなし」
・子どもの裁量に任せるために、家庭でルールを設ける
習慣5:親も一緒に成長する
マザーネット社長 上田理恵子さん
・「勉強ができなくて困る」ことに気づかせる
・勉強のやり方、時間の使い方は自分で考えさせる
習慣6:「熱中体験」で地頭のいい子を育てる
脳科学者 茂木健一郎さん
・何かに熱中する体験が地頭をよくする
・「自分ならできる」と思える子に育てるには
習慣7:教育はリビングの本棚から始める
YESインターナショナルスクール校長・サイエンス作家 竹内薫さん
・読書は「発信力」をつけるために大切
・本がある家庭で育つと読み書き・計算の能力に影響
習慣8:なんで?の繰り返しで理系思考を育てる
東京大学教授 「渋滞学」考案者 西成活裕さん
・大切なのは「没頭経験」と「負けず嫌い」
・「言葉つなぎゲーム」で論理力を鍛える
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