働く親を不安にさせるのが保育園での事故や事件のニュースです。安全で質の良い保育環境を選ぶにはどうしたらよいのでしょうか。元保育士で保育関係の事業を展開するうめ先生こと梅原志保さん、都内の企業主導型保育園園長を務めるちょび先生こと菊地奈津美さんが語り合う座談会の下編では、保育園を選ぶ際に親が心掛けるべきことを聞きました。子どもをどのような環境で育てるかの判断基準は、保活中の方だけでなく、既に保育園に通わせている方も知っておくとよい内容です。ぜひ参考にしてください。
(上編) 保育士対談 「園バス事件は他園でもあり得ると思った」
(中編) 保育現場のヒヤリハット 散歩で公園に置き去りも
(下編) 安心できる園選びのために保育士が保護者に伝えたいこと ←今回はココ
(番外編) 保育士ママ 子をたたく同僚に抗議し、逆に危険分子扱い

ちょび先生(菊地奈津美さん)

家庭の子育て方針と保育方針をすり合わせる
日経xwoman DUAL(以下、略) 保育園での事件を耳にすると、保育園選びでは安全や保育の質こそが大切だと改めて感じます。一方で、家や駅からの距離、保育時間の長さ、園庭の有無や保育園の規模なども気になります。重視したい条件を考え出すと切りがないという人が多いでしょう。その中からどのようなことをポイントにして保育園を選ぶとよいのでしょうか。
菊地奈津美さん(以下、ちょび先生) 保育園のことが気になると思いますが、まず大切なのは保護者が自分たちの子育ての方針をしっかり持つことです。
―― 子どもが赤ちゃんだと性格もまだハッキリ分からないので、子育ての方針を考えるのは難しいと思います。どのようなことを考えるとよいのでしょうか。
うめ先生 わが子にどんなふうになってほしいか、そのためにどんな環境を与えてあげたいかということでかまいません。その後、性格が分かってきたらこの子のこんなところを大切にしてあげたいとか、こういうところを伸ばしてあげたいということも加味して、アップデートしていけばよいと思います。
子育ての方針が決まったら、候補にしている保育園の保育方針を調べ、家庭の子育て方針とすり合わせて、自分たちと考えの合う保育園を選ぶ。さらに通いやすさなどで絞っていくというのが理想的な選び方だと思います。
―― 「保育園の保育方針」とは? 園の玄関などに、よく「元気な明るい子」とか「あいさつができる子」というようなスローガンが掲げられています。そのことでしょうか?
ちょび先生 保育方針とはその園では保育において何を大事にするかという考え方を示したもので、パンフレットやホームページで明示されていることが多いです。見つからなかったら「どのような保育方針ですか」と聞いてみてください。「元気な明るい子」などのスローガンを保育方針として掲げている園も多いのですが、保育の方針としてはハッキリとしておらず、職員たちが同じ方向を向いて保育をしていくための指針にはなりにくいと私は思います。
保育方針は園によって驚くほど違うものです。できれば説明会に参加して直接聞いてみてください。複数園の説明会に参加するうちに、違いが分かってくるでしょう。質問も遠慮せずどんどんしたほうがよいですね。
保護者と保育園の方針が合うというのは、実は保育園にとっても大切なことです。例えば、のびのび保育を掲げる保育園ではたくさんどろんこ遊びをさせたいと考えるでしょう。けれど、どろんこ遊びをさせたくない家庭の子どもがたくさん入園してきたら、困ったことになります。
うめ先生 園の方針を実践しようとすると、保護者から不満が出てしまうかもしれませんね。「今年はどろんこ遊びをさせたくない保護者が多いので、どろんこ遊びを控えよう」みたいなことになるかもしれません。するとのびのび保育という保育方針に共感して入園した家庭は、望んだ保育が受けられないことになります。
ちょび先生 認可園の場合は申請時に希望園を複数書きますね。その際、希望順位が下位であっても、必ず保育方針を確認して、家庭の方針に近いところを選ぶのがよいと思います。家庭と園の方針が合うところに入園することが、その園の保育の質を向上させることにつながると思うからです。
