しかし、何かひっかかる背景には、自分の価値観とずれがあったり、社会的な問題が隠れていたりすることも。そうしたモヤモヤに向き合い、問題の本質を明らかにして考えることが、周囲に流されない子育てにつながっていくはずです。そこで本特集では、働く親が抱くモヤモヤについて、専門家に「そもそも、どうしてそうなっているの?」の疑問をぶつけました。ぜひわが子の子育て・教育のヒントにしてください。
子育て・教育のギモン 「そもそも」が知りたい!
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親たちはなぜ「偏差値」から逃れられないのか
「偏差値が高い難関大学の卒業生が、社会で活躍できているとは限らない」というのは、実際に社会の最前線で仕事をしているママやパパなら、誰もが実感しているところではないでしょうか。学歴の高さが人の価値を決定づける訳ではなく、「今後は学歴の価値がますます目減りしていく」といった声も聞かれます。でも、自分の子育てとなると、話は別。「そうした意見を真に受けて、偏差値を意識せずに子育てをして、本当によいのか」と悩む親は少なくありません。
親たちはいわゆる偏差値世代。「社会に出たら大学名は関係ない」と頭で分かっていても「難関大学を卒業しておくほうがやっぱり安心」と考え、そのために親ができることとして、小学校の早い段階から受験塾に通わせて偏差値を上げ、難関中高・難関大学へのレールを一直線に敷くのが、子どものためになるのではないか、と考えがちです。
実際、難関大学の合格者ランキングの上位には私立や国立の一貫校が名を連ね、中学受験をする子どもは増加傾向にあります。価値観が多様化し、グローバル化が進む現代においても、日本という狭い世界の中で閉じた「偏差値社会」は健在で、むしろ加熱している側面もある、というのが実情のようです。
では、親の世代と同じように偏差値を上げるための勉強をして、偏差値の高い大学に入ることで、本当に子どもの人生は安泰なのでしょうか。そもそも、大学入試が多様化し、一般入試の枠が減っている今、偏差値にはどのような意味があり、どう活用していけばいいのでしょうか。
そこで大学教育の研究者で、現在は桐蔭学園(神奈川県横浜市)の理事長として新しい形の進学校像を目指しながらアクティブラーニングの実践に取り組んでいる教育学者の溝上慎一さんに、順を追って聞いていきます。溝上さんは、「偏差値偏重の中で育ってきた親たちが、いったん、大学を選ぶ基準の『アンラーニング』をして、今の状況を把握することが必要」と話します。
●「いい会社」に入るには「いい大学」は今も変わらない?
●偏差値で大学を選ぶことでいい学びは得られるの?
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●大学入試改革が進む中での、偏差値の役割とは?
