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「イノベーション後進国」に危機感
「日本はここ30年くらい、『イノベーション後進国』になってしまっていると考えられます。今の子どもたちが大人になるころには、日本の国力はさらに低下してしまうのではという危機感を抱きました」。オープンイノベーションに特化したマッチングプラットフォーム事業を第1子産育休中の2015年に起案、推進してきた、eiicon company代表/founderの中村亜由子さん。現在は、6歳、3歳、0歳児を育てる母親でもあります。

「オープンイノベーション」とは、イノベーションを創出するための手段で、企業内部だけでなく、外部のアイデアや技術などと組み合わせることでイノベーションを起こす手法を指します。自社内の経営資源だけで行う従来の「クローズドイノベーション」と対比される概念です。
「日本をイノベーション先進国にするために、オープンイノベーションという言葉が『中途採用』という言葉と同じくらい当たり前に使われるようにしたい」。現在はそんな使命感に突き動かされている中村さんですが、新卒で2008年にインテリジェンス(現・パーソルキャリア)入社後は、IT系企業の正社員の転職支援営業などをしていました。
「使命感の芽」が育った直接のきっかけは、産休中に、経営者の知人が新たな提携先を探すのに、人づてや金融機関経由での紹介といったアナログな手法しかなくて困っていた現状を知ったこと。これからの日本を強くするためにも、企業同士が出合ってオープンイノベーションに発展させることができる場が必要だと感じた中村さんは、プラットフォーム事業を起案。起業するならビジネスモデルを推敲(すいこう)する上で「壁打ち」が必要だと考え、育休中に起業家など約100人に事業案について意見をもらう「100本ノック」を自ら実施。たまたま自分が所属する企業で募集していた、社内起業に手を挙げました。
現在はパーソルイノベーションの社内カンパニーeiicon company代表として、53人のメンバーを率いて、プラットフォーム「AUBA」(eiiconより改名)などを運営。共創実績件数は1000件を超えました。「例えば、宮崎県のカツオ一本釣り漁船を操業する水産会社では、これまでベテラン漁師の勘が、漁獲高を左右するひとつのポイントでした。しかし、高齢化で漁師が船を降りてしまうという事態に直面した際にAUBAを活用いただき、東京にある、データサイエンスのベンチャー企業と連携。操業日誌や水揚げ量などのデータを解析、船に実装して、『漁師の勘』をAI化する試みが始まっています」
「世の中にないものをつくろうとすると『ないものにはない理由がある』と批判する声が必ず出てきます。オープンイノベーションも同様で、当初は、『機密情報に値する部分を外に出すなんてとんでもない』などといった批判の声は大きかったです。私は意味があると信じて事業化しましたが、数多くの実績が見えてきたことで、少し安堵できた側面もあります」
事業を成長させながら、2018年に第2子、2020年に第3子を出産。オープンイノベーションという視点から日本社会に変革を起こそうとしている中村さんが自身の子育てで強く意識し、実践していることとは? 勉強やスキルより身に付けてほしいと中村さんが考えている力や、家族で年間目標を決める取り組みなどについて詳しく聞きます。