共働きのマネー戦略をアップデートせよ!
「私たちが老後になる頃には、もらえる年金が不足するだろうから、老後資金をしっかりためておかなければ」と漠然と思っていた中で、危機感が一層強まるきっかけになったのが、2019年6月に大きな話題になった「老後資金2000万円不足問題」のニュースだったのではないでしょうか。
特にコロナ禍により今後の収入に不安を感じている場合、「これから教育費もかかるのに、老後資金までためることができるのか……」「教育費と老後資金のバランスはどうしたらいいのか」と悩んでいるかもしれません。
ただ、自分たちの老後について心配するあまり、子どもの教育費を切り詰めてしまうと、「もっと進路の選択肢を増やしてあげればよかった……」と、あとから後悔することもあるでしょう。そこで本記事では、具体的な「わが家の不足額」を知る方法を、ファイナンシャルプランナーの前野彩さんに伝授してもらいます。
大和総研金融調査部主任研究員の是枝俊悟さんは、「一般に、共働き世帯の場合は2人分の年金があり、生涯賃金が多ければ、それだけ受け取る年金額そのものは多くなります」と指摘します。「退職金が出る勤務先であれば、さらに不安は軽減されるでしょう。ただし注意点として、現役世代の年収と比べた年金額の割合(所得代替率)は低くなるため、相対的に不足を感じやすいという問題もあります。老後も現役時の生活水準を維持したい場合は、貯蓄や投資などの資産形成を行っておき、公的年金に上乗せしていく必要があるでしょう」(是枝さん)
「老後資金2000万円不足問題の金額だけを見て慌てる必要はありません」と、前野さんもアドバイスします。
「2000万円という金額は、金融庁の金融審議会の市場ワーキンググループが報告書の中で出したもので、高齢者無職世帯の1カ月当たりの支出のうち、収入でまかなえない額に平均余命期間を掛けた大まかな数字です。『1人2000万円? では夫婦2人で4000万円ためなければいけないの?』などとさまざまな誤解を招いているようですが、報告書は1世帯当たり2000万円が不足するとしています」

「ただしこれは、あくまでも平均額であり、シミュレーション上の数字です。老後資金に関係するデータは、年度によって変わりますし、支出の程度も人によってそれぞれ。老後もいろいろな場所に出掛けて、外食もして、という暮らしを続けたい人もいれば、読書をして近所を散歩するだけで幸せ、という人もいます。子どもが成長してからも、子どもへの金銭的な援助を惜しみたくないという家庭もあれば、すべて自分たちで何とかしなさい、という方針の家庭もあります。2000万円という数字にとらわれず、あくまでも一つの目安として、家計について考えるきっかけにするといいでしょう」(前野さん)
「老後資金としていくらためなければいけないのか」を考える上で不可欠なのは、老後のわが家の「収入」と「支出」を把握すること。次ページから、4つのステップに分けて、前野さんにガイドしてもらいます。目指すべき金額がクリアになったら、漠然とした「お金の不安」から自由になれるはず。教育費についても冷静に考えることができるようになるはずです。