自信のない人こそいいリーダーになれる 子育てスキルは武器
日経xwoman編集部では、12月に女性のリーダーシップに関する書籍を出版する予定です。書籍のタイトルは『なぜ自信がない人ほど、いいリーダーになれるのか』。著者はワークシフト研究所・代表取締役社長の小早川優子さんです。本特集の2本目では「自信のない女性が管理職になることの大いなる意義」について、小早川さんに詳しく解説してもらいます。
女性リーダーは失敗を回避しがちである
前回記事「なぜ自信がない人ほど、いいリーダーになれるのか」の最後に触れた「優等生教育」とも関連して、「リーダーになる前は評価が高かったのに、リーダーになって以降はいまひとつ評価されない」という相談を女性から受けることがよくあります。そんな人の行動を分析すると、「小さな失敗」を避けるがゆえに、「失敗から学ぶ」機会を逸してしまい、リーダーとして成長する機会を逃しているという実態が見えてきます。
人間の成長に大きく寄与するのは「良質な失敗体験」です。
なぜ、組織におけるマイノリティである女性は、失敗への免疫が低くなってしまうのでしょうか。それには、挑戦の機会自体が少ないからということもあります。でもその前提として、そもそも、男性中心の組織の中で生き残っている女性の多くが、基本的に優等生タイプばかりだということでもあるのです。
職場の男性管理職を見ると分かると思いますが、男性管理職には非常に色々なタイプがいます。チームメンバーを力強く引っ張っていく人、黙々と仕事をこなす人、コンピューターのように作業を正確にこなせる人、口下手なのになぜか営業力がある人、失敗もするけれど大きな成功も経験している人、学歴は決して高くはないけれど努力と実績によって評価された人など……。
一方で、女性の管理職はどうでしょうか? 女性の管理職のほうが、男性に比べてバラエティに富んでいる……なんていうことは少ないと思います。
多くの日本の組織では、女性のほうが男性より「失敗しないこと」を求められています。その理由は、マイノリティであるがゆえにプロセスを正当に評価されにくいことや、私たちが無意識に持っているジェンダー・バイアス(性別による偏見)もあるでしょう。また、女性管理職の少なさゆえに何をしても注目されやすい、ということもあるでしょう。
歴史的な背景も無視できません。これは今に始まったことではないのです。「女子の教育は男子よりも厳しく行うべきだ」。これは、18世紀のフランスの啓蒙思想家であり、『社会契約論』の著者、ジャン・ジャック・ルソーが書いた世界初の育児指南書といわれる『エミール』で展開された内容です。この本は出版後賛否がありましたが、当時の庶民の育児やその後の先進国の教育に大きな影響を与えたことは確実です。