インプット3:アウトプット7が黄金比 書く・話す・表現する アウトプットが子どもを伸ばす
次にやってくるのは「誰もがつくり手となる時代」
親世代が子どもの頃、動画といえば、配信されたテレビ番組を「見る」といった、受け手側に立つ行為だけでした。
しかし、YouTubeやTikTokなどの動画配信プラットフォームが登場して、個人でも手軽に動画を発信できるようになった今、子どもたちにとって動画は、「見るもの」から「つくるもの」へと変化してきています。
「今後は動画以外のあらゆる分野においても、誰もが『つくり手』となる流れが加速していくでしょう」と話すのは、慶応義塾大学総合政策学部教授で、創造的な学びの「型」を見いだし言語化する研究・活動に取り組む井庭崇さんです。
「戦後、日本は欧米社会に『追いつけ、追い越せ』と、わかりやすく模倣することで成長してきました。他の先進国に肩を並べてからは、自分たちの未来像を自らつくっていくことが求められています。しかし、実情はどうでしょう? 私たちが目にしているのは、そのための創造力が欠如した日本社会の現状ではないでしょうか」
今後、どのように社会が変化していくのか、井庭さんはこう説明します。
「私たちは、色々な物を得ることが豊かさの象徴だった『消費社会』から、コミュニケーションや人との関係性に重きを置く『情報社会』への移り変わりを経験しました。『情報社会』の次にやってくるのは、『創造社会』です。今後は、ものづくり以外にも、コミュニティ、仕組み、働き方などを含めたあらゆる分野において、自分たちでつくるということに、価値が置かれる時代になっていくでしょう」

「つくる」ということはこれまで、一部のデザイナーといった職業の人や芸術的才能のある人たちのものと思われてきました。しかし、そういう時代は終わり、あらゆる分野で多くの人たちがつくり手となる時代がやってくるといいます。
「しかし、そうした時代の流れがある一方で、現状の教育現場や家庭で、『良いつくり手』となる教育がなされているかというと、そうではないでしょう。むしろ、子どもの創造性が成長する機会を邪魔するような対応をとっていることが少なくありません」
例えば、子どもの中には、『ポケットモンスター』や『鬼滅の刃』、『プリキュア』シリーズなどに登場する好きなキャラクターをお絵かきすることに夢中になる時期がある子も多いでしょう。そうした姿を見た親の中には、つい、こんな言葉が口をついて出てしまいそうになる人もいるのではないでしょうか。

「自分のオリジナリティを追求しようよ」
「それって何の意味があるの?」
はっきり口にしないまでも、心のどこかで「誰かが考えたアニメキャラクターなどではなく、もっと、自分にしか描けないような絵を描いたらいいのに」という気持ちになることはあるかもしれません。
しかし実際には、こうした子どもの「まねをする行為」には、「創造性を伸ばすヒント」が隠されているのです。
新たな価値やものを生み出し、「つくる」ことが求められる時代に、子どもの創造性を邪魔しないようにするには、親にどのようなマインドセットが求められるのでしょうか?