存在感と発信力が必須スキルに 「意見を言える子」の育て方
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2低学年までに知っておきたい 話すことが楽しくなるコツ
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4子どもの語彙力をアップするため家庭でできる3つの方法
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5「反対意見言われる耐性」身に付く、親子の会話法←今回はココ
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6親子で磨こう! 「オンラインで意見を伝える」スキル
新型コロナウイルスの感染拡大は、世の中にさまざまな変化をもたらしました。好むと好まざるとにかかわらず、従来とは異なる考え方や状況が常態化した社会を生きることになった私たちには、新しい「当たり前」に対応するためのさまざまなスキルが求められています。
そのスキルの1つが、クリティカルシンキング・スキルです。大学や小学生向けのクラスで「クリティカルシンキング」を教える狩野みきさんは、「物事をじっくりと主体的に考えるための思考法です。『なぜ?』『本当に?』といった疑問を持ち続けることから自分の意見を生み出します」と解説します。
ニューノーマル時代を生きる子どもたちが、どうすれば自ら考え、意見を言う力を身に付けることができるのか――。狩野さんに、「意見を言う力」を引き出す会話の工夫を聞きました。
意見を言わなければ、存在意義を問われても仕方ない
「意見を言う力」が重視されるようになった背景の1つに、「非対面型コミュニケーション」の増加が挙げられます。Zoomなどのオンラインや、チャットツールを使った非対面型コミュニケーションは、相手の熱量を測りにくく表情や声色から本音を読み取るのが難しいことから、どうしても誰かの意見を待ってしまいがち。しかし、リアルなコミュニケーション以上に自分の存在をアピールしなければ、すぐに画面の中に埋もれてしまいます。
狩野さんは「日本人は、もともとスタンスを明確にして意見を主張するのが苦手な国民性。ニューノーマル時代、グローバルに活躍するためにも“意見を言う力”は欠かせません」と話します。
象徴的な出来事として狩野さんが挙げたのが、Zoomを使った大学の授業でのワンシーンです。その日のテーマは、「中絶」について。狩野さんは、30人近い学生に対して、次のように指示を出しました。
・非常にデリケートな話題であるため、自分の意見に「覚悟があるのか」と問うこと
・自分の意見に責任を持つこと
その結果、実に9割の学生が「賛成とも、反対とも言えない」として、当たり障りのない発表をしたといいます。はっきりと自らの意見を述べたのは、外国に6年半住んで帰国したばかりの学生だけでした。
「私の注意を踏まえた結果、誰も傷つけない立場を選択したのだろうと推察しました。驚いたのは、唯一、立場を明確にして意見を表明した、その学生が、授業の後で『なんかモヤモヤする』と私に話しかけてきたことです。
彼女は『どっちつかずなんて、意見じゃない』と言うのです。『自分は課題をもらってから1週間かけて考えをまとめ、反対意見の人の心情にも配慮して、責任を持って意見をアウトプットしたのに』と」
時を同じくして、狩野さんは別の大学でも同じような出来事に遭遇しました。やはり帰国生の学生が、自分の意見を言わない、スタンスを明確にしない日本人を揶揄(やゆ)して、「謎の東洋人にならないようにしたい」と言ったのです。
「彼女はとてもユニークな表現をする子。謎の東洋人とは言い得て妙だなと感心しつつ、ガツンとやられた感じもしました。欧米には、『Let’s agree to disagree.(反論するのは当然、と心得よう)』という表現があります。これは、それぞれが自由に意見を出し合ったうえで違いを認め合うときに使われる言葉です。自分なりの根拠があれば、人と違ってもいい。議論は合意もあれば反論もある。欧米ではそれが当たり前として取り入れられています。そうした考え方を早いうちから身に付けておくと、臆せず意見を言える子になると思います」
どうすれば、「自分で考えて意見を言う力」が自然と身に付くのでしょうか。また、3ページ目からは、親子の会話を通じて「自分で考えて意見を言う力」を身に付けるためのヒントを紹介します。
