羽生 うちの長女も今、『グリム童話』が大好きなんですよ。残酷な話も大好きで。

中川 そういうお話に興味を持つときってありますよね。私も子ども時代、グリム童話は真剣に読みました。まだ子ども向けの本がなかった時代なので、金田鬼一さんが訳された岩波文庫を読んだの。

羽生 今、わが家にあるものと同じです! 悪い事をした人を刻んだりゆでたり食べちゃったり。中川さんの本もそうですけど、子どもに読ませるからといってごまかしたり、嘘の説明をするのはあまり子どもにはよくないなと思います。グロテスクでも本当のことを教えたいと思っています。そうしているうちに、実は私も『グリム童話』にハマっちゃって、週末の空き時間に熱心に読んでいます(笑)。

中川 お子さん今、何年生?

羽生 小学校1年生です。

中川 すごいわね。私は2年生の時に読んだのに(笑)。

グリム童話で語彙を増やす

中川 金田さんのグリムには「腸詰め」の横に「ソーセージ」ってかなが振ってある。「肉汁」の横には「ソップ」。戦争中だったから、腸詰めなんて当時、食べたことも見たこともありませんでした。もちろん、あなたのお嬢さんは知っているでしょうけど(笑)。

羽生 やっぱり子どもたちが一番好きなのは、食べ物が出てくるシーンですね。

中川 今は食べ物が豊富にある時代なのに、やっぱり興味あるのね。

羽生 「ごちそうがパンと温かいスープ」「煮たもの、焼いたものまで出してくれました」といった文章を読んで、煮たもの、焼いたものがごちそうなんだということを本人も理解できたようです。だからすかさず「ほらね、ママ、煮ているでしょう? これはごちそうなんだよ」って(笑)。

中川 いいわねえ。金田鬼一さんのグリム童話は一種の研究本ですからね。1つのお話でも、3つくらいのタイプが載っています。

 特に語彙が豊富なのがいいんですよね。お話によって、「お母さん」が「お母様」になったり、「母ちゃん」になったり、「おっかあ」になったり、「おっかさん」とか、「おふくろ」とか。金田鬼一さんの訳を読むと、子どもも語彙が豊富になると思います。

岩波少年文庫で保育の道を目指す

羽生 中川さんは昔から保育園の先生になって、働きながら子どもも産んで、と考えていたんですか?

中川 小さな頃はそんなことを考えもしていませんでした。私が子どもに関心を持ったのは中学生の時に岩波少年文庫に出会ったからです。