鈴木会長 ビジネスモデルが変わったといっても、勤務体制が変わらないと女性が働き続けられません。地元に住んでいたとしても、何時に帰れるか分からないのでは、子どもがいる女性は大変ですから。
鈴木亮 でも遅くまで働く上司がいると、帰りづらいでしょう。
鈴木会長 たださっきも言ったようにビジネスモデルが変わってきたんですね。昔のようなビジネスは電話だけで済むんです。電話なら夜の10時でもかけられますから、遅くまで残る人が出てくる。ただ、今のようにきちんとお金を預けていただくビジネスは、電話一本では決まらないのです。
鈴木亮 大きなお金が動きますからね。
鈴木会長 10万円くらいなら電話でもいいかもしれませんが、何千万円というお金を預かろうとしているときは、電話一本で済むはずがありません。きちんとしたビジネスをしないといけない。そう考えると、遅くまで残っている必要はないんです。ただ、それでも支店長が残っていたりするんですよね。
羽生 どうして残っているんですか?
鈴木会長 なんとなく自分の気分で残っているんですよ。
鈴木亮 気分ですか。分かる気もしますね。
鈴木会長 支店長が残っていたら、他の社員も残らざるを得ないでしょう。そもそも上司は、単身赴任できているから、家に帰っても仕方がないという人間も多い(笑)。だから、7時までには退社する、というルールを作ったのです。
大和証券が毎年夏に実施している「家族の職場訪問」での記念撮影
「原則」ではなく「必ず」7時までに帰るルール
鈴木亮 「7時までに帰れ」と決めた、あのルールは画期的でした。
羽生 みなさんが原則7時までに帰るのですか?
鈴木会長 「原則」ではありません。「必ず」全員が帰るのです。
鈴木亮 残っていると怒られる。
羽生 ペナルティーがあるのですか?
鈴木会長 何時に社員が退社したか報告する義務がありますから、守っていない場合はすぐに分かります。そうしたら人事から「支店長失格」だと通達が来る。
鈴木亮 すると翌日から時間通りになる?
鈴木会長 そういう話は早く伝わりますからね(笑)。
うちは子どもが小学生になるまで時短勤務を選ぶことができます。でも、早く帰る人が仕事ができないかというと、そんなことはないのです。むしろできる人が多い。早く帰らなくてはいけないから、仕事に一生懸命に取り組む。働き方が「濃い」のです。
仕事ができるできないは必ずしも時間ではありません。一生懸命に根を詰めてやっていると、いい仕事ができるんですよ。