【問題の処方箋】

 補助がないためにベビーシッターが高額になり、安価な個人シッターに流れる、という構造的問題を、具体的に解決するために考えられるのが、「ルールに基づき、ベビーシッター利用者に補助をする」ということです。

 特に低所得者やひとり親等が、安価にベビーシッター等を利用できるよう、「全国ベビーシッター補助券」のようなものを提供します。そして、このクーポンを使えるベビーシッター企業に対し、きちんと届け出と情報開示義務等のルールを課します。

 そうすることで、利用者にとってベビーシッター企業が提供するサービスが安価になり、質に問題がある安価な個人シッター等を利用するインセンティブが減り、事故リスクが減っていくことが考えられます。

 フランスではベビーシッターを使った費用は、税金から控除する、というように、実質的な利用者補助が行われていますし、諸外国でも同様の制度が存在します。

 とはいえ、もちろんその財源が必要なのは言うまでもありません。

 例えば配偶者控除を廃止すれば3800億円の国税収入が得られます。3800億というのは、日本中のベビーシッター利用者にあまねく補助をしてもおつりがくる額です。

 また、もっと言えば、例えば多額の資産(5000万~1億円・1億円以上)を持っている高齢者の年金を、月3万~5万円削減すれば、4.5兆円捻出できます。(※2

 4.5兆と言えば、日本中の全ての子ども達に十分な量の保育所と幼稚園と病児保育とベビーシッターを提供できる額です。

【まとめ】

 この悲劇を二度と繰り返さないためにも、しかるべき制度改正が行われることを強く願います。

 決して、「知らない人に預けるなんて、ひどい母親だ」という母親叩きや、「無資格でもできるベビーシッターなんて、信用できない」というベビーシッター叩きに堕さない、前向きな取組みにつながってくれることを、心から祈っています。

 「構造」の犠牲になった子どもへの、それがせめても弔いではなかろうか、と思うのです。

【補足】
※1 例外は「行政版ベビーシッター」とも言えるファミリサポートセンター事業で、これは税投入がされていることから、700円~900円/時という安価な設定になっています。しかし、自治体によっては実施されていない、保育者の数が恒常的に足りなくて依頼しづらい、長時間は難しい等、課題は多々あります。また、経産省の外郭団体であるこども未来財団が、ベビーシッター育児支援割引券を発行していますが、登録企業の従業員でなくては使えないこと。また補助額も低額である等の問題があります。
※2 同志社大学の柴田悠准教授の試算による。http://gendai.ismedia.jp/articles/-/36388