多くの人が接するのは金融機関の営業マンや窓口にいる株や保険を売っているFPだろう。独立をしていても、ビジネスとして成り立っているのは保険を売っているFPが大半を占める。自分のような金融商品を売らずにレッスン・相談がメインのFPは少数派だ。どちらが良い・悪いというわけではなく、単純にやっている仕事が違うということになる。

「今回は住宅ローンの繰り上げ返済と運用のバランスを相談したいということですが、家が2軒もありますよね。これはどういう事情なんでしょうか

「3.11の東日本大震災前日が銀行の融資実行日だったんです。本当は今住んでいる家を処分して住み替える予定でした。ただ、新しい家はホットスポットに近かったこともあって、子どもも小さいですし不安を感じてしまって。結局その家は貸し出して一度も住んでいません」

「借り手はついたので今のところは大丈夫ですが、ローンが約3200万円とたくさん残っていて心配です。完全に予定が狂いました」

 住み替えが無事済んでいれば1軒目の家の売却代金でローンは完済できたはずが、1軒目は夫婦のペアローンが残り、2軒目は夫がローンを組み、現在住宅ローンが3つもある状況だ。

「空き家にならなかったのは不幸中の幸いですね。頂いたデータを確認しますが、収入に対して貯金がずいぶん少ないように思います。これは繰り上げ返済が原因ですか。たぶん相当返済されていますよね」

「毎年の貯金額が500万円から700万円と書きましたけど、全部繰り上げ返済にあてています。それもあって1軒目はもう少しで完済出来そうです」

は高収入だが、急にクビになる可能性も

「ひとつ気になったんですが、購入された住宅の価格は案外予算が低いですよね」

 安野夫妻夫婦は購入した住宅価格はどちらも4000万円程度と、収入に対して抑え目だ。これについてはもっと高額なマンションも検討した事もあるという。

「中嶋さんの連載に書いてあったような高い家も見に行きましたけど、私も夫も普通のサラリーマン家庭で育ちましたから、そこまで必要かなという思いはありました。さすがに住宅ローンが7000万円とか8000万円と言われるとちょっと怖いというか……。あとは私の収入も、今はたくさんもらえてますけど、外資系は急な失職もありますからハイリスク・ハイリターンです」

「職場はやっぱり厳しいですか?」

「今の職場は6年目ですが、私の部署は入社した頃と比べて半分以下まで人員が減っています。ルーティン業務の大部分がシンガポールに移されました。クビになる時は3カ月猶予を与えるから次の職場を自分で探せ、という感じです」

「その状態だと、解雇されて急な転職で給料半減、なんてこともありえますか?」

「十分あると思います。私自身は自分の仕事をルーティン業務だとは思っていませんけど、どう判断するかは上司と本社次第ですから何とも……。安定度では夫のほうが上です」