親子で一緒に中学受験することの意味

羽生 親子で中学受験に取り組むというのはどういう意味がありますか?

尾島 中学受験を親子でするというのも、おもしろい経験だとは思うよ。一緒にやったっていう感覚が経験になる。やってあげたという意味じゃないよ。一緒にやったという感じ。

羽生 受験でもないと、本気で一緒に真剣に取り組むというのはなかなかない経験ですもんね。

尾島 スポーツでやる親子もいるだろうけれど、親からすると中学受験は頭の体操にはなった。当然コミュニケーションも生まれるし。あとね、親が健康になるんだよ。

羽生 朝が早くて?

尾島 そう。うちの場合、朝早く起きて勉強していたんだけど、当然親も早起きする。夜勉強するときは酔っぱらってやるわけにはいかないから酒も飲まない。だから健康になる。

羽生 算数の勉強も見たのですか?

尾島 算数は無理だね。それはもう完全に塾にお任せ。中学受験を経験した親なら多少は教えられるかもしれない。でも経験者であっても、それはこの本(日経キッズプラス『中学受験する? 公立に行く?』)の中でも書いたけれど、時代によって解き方が変わるのでやめたほうがいい。算数だけはもうどうにもなりませんよ。でも、子どもからしたら楽しく解けるんだよね。あと、本当のことを言うと、算数ができるかどうかが中学受験で合格するかどうかの大きなポイントになります。

羽生 そうなんですか!?

尾島 算数ができなくて、上位校を目指すのは難しいと思う。特に男の子。女子校は算数がちょっとやさしめだったりするけどね。

羽生 算数は得点に差が出やすいからですか?

尾島 そう。差が出やすいし、基礎的な頭の能力を見るような部分があるので。算数は数学とは違う。粘り強さや発想力、正確さ、試行錯誤しながら法則を見つける力など、いろんなものが試されている。何のためにこんなことするんだ? と思うかもしれないけれど、能力を試すのには算数は非常にいい。

羽生 国語力も大切ですよね。

尾島 まあ、算数でも問題文の意味がわからないっていうケースもあるだろうからね。ただし、読書が好きと国語ができるは別だからね(笑)。ホントに! 俺も「どうしてこんなに読書してるのに国語ができないんだろう」ってずっと思ってたから。事実、うちの息子もそうだしね。読書と国語力はイコールではない。必要かもしれないけど、十分ではない。

羽生 国語力はテクニック?

尾島 そうだね。国語は、変な言い方だけれど「すれた人間」のほうができるね。男の子は純だから、そのまんま受けとめてしまって、どんどんどんどん迷ってしまって答えがわからない。

 例えば選択問題だとしたら、男子はどれも正しい答えに見えちゃうのね。どれもまあいいんじゃないかと。正解するには、ちょっと冷めた目で見なきゃいけない。「あっ、これはこんないいこと言ってるけれど、ここがちょっとだけ違っているから正解のようで正解じゃないんだよな!」と見抜く力。出題者が考えていることを想像する力。本来国語力ってそんなふうに試されるものではないはずなんだけど、ある意味無理やり問題を作っているわけでしょ。○×で点数をつける形式にそもそも無理があるんだよね、国語は。その無理やりなところを見抜く力が必要になる。それができるのは中学受験の段階では、女の子のほうが多い気がするな。