草食の父親が、息子の教育で譲れない一線とは?
ただ、抗う気配も見せないまま引き下がったわたしだが、虎の今後について無関心なわけではもちろんない。草食であっても譲れない一線というものはある。
スポーツだけは、絶対にやらせる。
わたしは早生まれだった。おまけに発育が遅かった。なので、子どもの頃から体育やらスポーツがえらく苦手で、だから本を読むようになった。
幸い、高校時代に入ったあたりでなんとか周囲の運動能力に追いつき、「あら、俺って別に運動音痴じゃなかったんだ」程度にまでは自信を回復することはできたものの、ちっちゃな頃から鍛えていれば違った人生になっていたのに、と何度思ったかわからない。
どうでもいいことだが、いわゆる男の物書きに早生まれが多い気がするのは単なる思い込みなのだろうか。運動ダメだから勉強頑張るっていう図式、すげえ腑に落ちるんですけど。
ちなみに、ウチの親がわたしにスポーツをやらせなかったわけではない。やらせてはくれた。水泳、サッカー、バスケット。全部YMCAで。でも、全部長続きしなかった。身体は小さいは上手くもないわでまるで楽しくなかったわたしが、放り出してしまったのである。
ゆえに導き出されたわたしの結論。絶対に辞めさせない。合う、合わないはあるにせよ、何か一つは絶対に続けさせる。
それともう一つ。格闘技をやらせる。
今から10年ほど前、テレビの仕事で格闘家の高田延彦さんと一緒にブラジルへ行ったことがある。こう言ったらなんだが、高田さんはまるでポルトガル語ができないし、英語だってほぼアウト。で、こういうヒトが外国に行くと、大概卑屈になる。おどおどして、日本にいる時とは別人のようになってしまう。わたしは高田さんのことが大好きだったし、なので、そんな高田さんの一面が見えてしまったらイヤだな、と思っていた。