「自身が家計の担い手である場合は別として、主婦の起業は、夫(の収入)という保険がある」と大内さんは指摘する。生活費まで稼ぐ必要がないから、無理をしてビジネスを大きくする必要もなく、リスクを負わずにチャレンジできる利点がある。仮に失敗しても痛手は少ないのだからと割り切って始められる。さらに「甘い起業」だからこそ、働く時間を短く抑えられるので、家族との時間も大切にできる。

 「お母さんが毎日イキイキと楽しく働いていれば、子どもにもいい影響を与えると思います。それに子どもはいつか手が離れるもの。小さく始めた事業を後に大きくすることだってできる。ハッピーキャリアプログラムでは、ビジネスプランづくりの基礎をしっかり学ぶので、修了後も各々が成長して、事業規模や業務内容を拡大している人も多いんです」(大内さん)

 子育てや家庭のことはきちんとやりながら、それでも「何かしたい」と考え、自分の好きなこと、得意なことの延長に起業を見出す女性たち。次回は、自身の趣味やキャリアを生かし、子育てをしながら、ニッチなサービスで起業を成功させた女性2人を紹介する。

大内章子さん
関西学院大学専門職大学院経営戦略研究科 准教授・博士(商学)
総合商社勤務の後、慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程修了、米国ピッツバーグ大学研究員、英国ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス客員研究員、三重大学人文学部助教授を経て現職。主な担当科目は人的資源管理、人材マネジメント。大卒女性ホワイトカラーのキャリア形成、欧米の賃金・評価制度などを研究。日本労務学会研究奨励賞受賞。著書に『多様化時代の労働』(共著)。小学生の姉弟の母親でもある。

(文/田北みずほ 写真/水野真澄)