ここでいう「パワー」とは、お金、時間、労力(気持ち)のこと。「せっかく遠くまで来たんだから子どもに喜んでほしい」という具合に…。

 だからこそ、「楽しかったでしょ?」と聞きたくなるわけですが、いつもと違う大きな体験をすると、子どもにとっては生活が乱れ、想像以上に疲れてしまうことになります。出かける際には「動物園へ行く」という目的だけでなく、ぜひ少し計画を立ててみてください。計画の立て方は下を参考に!

1、目的
「今回のお出かけで何を経験してほしいか」という目的を決めます。
2、タイムスケジュール
何時に出発をして帰ってくるのか、お昼はどこで何時頃とるのかといったタイムスケジュールを決めます。
3、イレギュラーのリスク回避
雨が降ってきたらどこへ行くかなど、イレギュラーの出来事を想定し、準備物なども再検討しておきます。
4、事前準備
獲得(経験)してほしいものが「動物に興味を持つ」ということだった場合、前日に動物図鑑や絵本を見ておき、帰ってきたら動物のお絵かきをして振り返るなど、「行って終わり」にならないように経験を膨らませるフォローを考えておく。
5、帰宅後の意識づけをイメージングしておく
 子どもの様子をよく見ておき、「ぞうさんをしっかりよく見ていたね」など、伝えてあげたいことを〝意識づけ"することも忘れずに。

 そして、体験後は「どうだった?」「どこが楽しかった?」と具体的に聞いてあげてくださいね。

親が考える「特別な体験」より、子どもは「日常」のほうが大事

 ひとつ、私が新米保育士だったころのエピソードがあります。子どもにいろんなことを好きになってほしい、経験してほしいと思って、クラス全員分の籠を作りました。園で自分が作った果物や野菜を入れたがるだろうなあとイメージしていたのですが、子ども達は、籠を頭に乗せたり、お買いもの籠のように持つだけで喜んでいたり…。せっかく作ったのに、なんで帽子なの! なんで果物を入れてくれないの!と、自分の想像通りに活動できなかったことにショックを受けたのを覚えています。

 翌日は、どこにでもある風船を2つだけ膨らませてみました。みんなで高く上げてみたり、サッカーのように飛ばしてみたり。すると、「明日もやろう!やろう!」「風船やれるなら早くお支度するよ」と子ども達が大興奮だったのです。私はただ、風船を用意しただけです。

 このとき、子ども達には「パワー」をかければよいというわけではないと気付いたのです。