ギンカ・トーゲルさん
スイスのビジネススクール・IMD教授。「組織行動とリーダーシップ」の研究と教育に従事。企業の女性幹部が職務でより成功し、自信を持って責任を果たしていけるように指導する「Strategies for Leadership」プログラムのディレクターも務める。女性リーダーの活躍推進に、「女性自身に対する啓発・教育」「(男性経営陣、マネジャーを含む)組織側に対する啓発・教育」の双方の観点から自らのライフミッションとして取り組んでいる
社会が女性に対して「パーフェクト」を要求する
羽生 先ほど女性と男性では、ロールモデルの捉え方が違うというお話を伺いました。女性は仕事も価値観もプライベートも、すべて完璧にそろっている人をロールモデルに求めてしまうと。
ギンカ・トーゲル(以下、トーゲル) その通りです。だからロールモデルになるような人が少ないのです。多くの女性はロールモデルを見つけたら、その人のある部分ではなく、その人全体を追い求めようとします。
女性に対してパーフェクトなものを要求する傾向は、どの社会にもあるように思います。学校教育の中にもあります。女性はいつもすてきな身なりをして、清潔でいなければならないとか。
例えば、男の子が外で遊び、泥だらけになって帰ってきたとしても当然のこととして受け入れられますが、同じことをきれいな洋服を着た女の子がしたらどうでしょうか。「あなたは何をやってるの!」という話になりますよね。そんな幼少期のころから、女性にパーフェクトなものを求めることが始まっています。
羽生 パーフェクトな人を憧れとするあまり、自分は欠落していると思い込んで、管理職にはなれないと尻込みするのでしょうか。