『ねずみのすもう』(2006)撮影:Arnold Groeschel
“親子で楽しめるダンス”をめざし、2006年から不定期に彩の国さいたま芸術劇場で上演されてきた『日本昔ばなしのダンス』シリーズ(3歳児以上入場可)。日本を代表するコンテンポラリー・ダンスの振付家たちが工夫を凝らした舞台は、これまで多くの親子連れを魅了してきた。
中でも今回上演する『ねずみのすもう』は、第一回公演で大好評を博し、日本各地の公立劇場や幼稚園などでも巡演。今回が待望のさいたま再演となる。太っちょねずみと痩せねずみが相撲をとっているのを見かけたおじいさんが、負けてばかりの痩せねずみにおむすびを作ってあげたことがきっかけでお金持ちになるという物語を、ダンスをはじめとする手法を駆使しながら展開。本作の振付家で、型に縛られない「何でもあり」のパフォーマンスで人気の男性ダンスカンパニー、コンドルズの主宰者・近藤さんに、創作のエピソードを語ってもらった。
——ペルーなど、南米3か国で育った近藤さん。子どものころ、日本の昔話にはどう触れていましたか?
小学校に入るまでは皆無だったと思います。絵本は大好きだったけれど、スペイン語の本ばかりだったから、『おむすびころりん』のような日本の有名な話を見た記憶は無いですね。
小学1年から3年まではいったん日本に帰ってきていて、そこではもっぱらアニメ番組『まんが日本昔ばなし』を観ていました。絵本のような絵柄で面白かったし、(教育的な内容だから)親としても子どもに見せたい番組的な空気がありましたよね。(声優を務めた)市原悦子さんの声をたくさん聞いて、あの番組の影響は一番大きいと思います。
——初めに劇場側から“日本昔話をダンスで”という依頼を受けたときには、どう思われましたか?
できると思いましたよ。“子どもに見せる”だけでなく、“他の劇場でも上演できる、大がかりでない演出”にしようと思いながら、昔話の本をたくさん読んで素材選びを進めました。
『はなさかじいさん』(2008)撮影:Naoya Ikegami
1回目の『ねずみのすもう』は、僕の劇団「コンドルズ」のメンバーに、大きい人と小さい人がいるからこの話にぴったりだと思って、それに決めました。2本目の『はなさかじいさん』は誰もが知ってる話を、ストーリーに忠実に再現してみたのだけど、セットが大がかりになってしまって、その後再演していません(笑)。3本目の『モモタロウ』はこれもみんなが知ってる話だけど、桃太郎ではなく鬼の視点で捉えてみました。だから1本1本、アプローチは違うんですよね。