スター街道をまっしぐらに進んできたビクトリアの軌跡は華やかなものだ。1974年イギリスの高級住宅地で生まれた。高校生のときに見たミュージカル『フェーム(Fame)』に感銘を受け、17歳から専門の学校に通ってダンスやモデリングを学んだ。その後、オーディションに合格して、ポッシュ・スパイスの名前で世界的スターグループのスパイス・ガールズの一員として歌手デビューを果たす。

 そして歌手として人気絶頂の1999年、サッカーのチャリティーマッチで知り合ったベッカムと結婚し、その年に長男を出産した。

夫の人気で写真を撮られると思っていた

 有名になるという夢をかなえ、実力も人気もトップクラスのサッカー選手と結婚し、子宝に恵まれたビクトリア。しかし、意外なことに心の中は満たされていなかったようだ。ファッション雑誌『エル』で当時をこう語っている。

 「スパイス・ガールズのときは“他のメンバーのため”に、夫と外出して写真を撮られるときは“彼のため”に、人が集まっていると感じていました」

 自分の実力ではなく、他のメンバーや“夫の七光り”で注目されていると悩んでいたというのだ。歌手から転身してファッションデザイナーの道を歩み始めたときも、過去のゴシップや豪華なライフスタイルのイメージが先行し、世間からは「セレブのお遊び」程度にしか捉えられなかったこともあった。

 当時について、ブログメディア『BOF(The Business of Fashion)』の最近のインタビューで、「私は長い間笑いものにされていた」と振り返っている。例えば、デザイナーの服を着てレッドカーペットに登場すると、自分で購入した服であっても、ブランド側から「着ないでほしい」という連絡が入ったという。