子育ての視点は、ビジネスにも生かされている。2014年ついに、自身のファッション・ブランドの単独店舗をロンドンにオープンした。子連れの母親がショッピングしやすいよう、試着室や通路を広々としたスペースにしている。英紙『テレグラフ』では、こんな思いを吐露した。
「私は、働く素晴らしさを信じて一生懸命な母親達を、とても尊敬しています。そういう女性達から信頼してもらえる洋服を作り続けていきたい」
貪欲な姿勢が現代のワーキングマザーのロールモデルに
ビクトリアの活躍は、デザイナーとしての成功にとどまらない。昨年9月には国連総会でHIV撲滅について訴えるなど、社会問題にも力を入れて取り組んでいる。
世界の課題にも目を向けながら、家族を大事にし、仕事にも懸命に取り組む。何事も諦めない「貪欲な姿勢」は、現代のワーキングママにとって励みになるロールモデルとなるだろう。
「働く母親は、子どもに悪いなと思いながら家を出て仕事に向かいます。ですが、子どもの存在が一番大事だし、これからもそれは変わりません。私は母であることを楽しみながら、仕事にも家庭にも自分のベストを尽くすだけです」
2014年9月ニューヨークの国連本部にて(写真:Crystal Pictures/アフロ)
誰もが羨む成功を収めたビクトリアだが、本当の自信や成功を手に入れたのはワーキングマザーとなってから。並々ならぬ努力を重ねてからのことだった。トップスターとはいえ、遠い世界の住人ではない。ワーキングママとしての悩みは何ら変わらない。
周囲の協力を上手に得ながら、仕事にも家庭にも全力で臨む。彼女は家事と仕事との両立を「ガラス球のジャグリング」に例える。ビクトリアの成功は、一日一日のジャグリングのような忙しさを楽しむところにあるのかもしれない。
(文/斉藤真紀子)