日本では民法により、保護者による体罰が容認されている
悲しいことに、仕事や家事、育児などに追われ、ついわが子に手を上げてしまうお父さん、お母さんはまだまだいるのが現状です。厚生労働省の発表したデータによると、2013年度では全国の児童虐待相談対応件数は7万3765件に上ることが分かっています。
日本国内の体罰に関する法制度については、学校教育法11条において学校現場における体罰が禁止されています。しかし、民法822条では「懲戒権」が存在し、保護者による体罰は容認されているほか、家庭を含むすべての場面での体罰を禁じる法律が不在となっているのが現状です。
さて、世界に先駆けて、育児手段としての暴力を禁じたスウェーデン。その1979年以後、多くの国がスウェーデンに倣い、2009年3月時点では合計24カ国が家庭内での体罰を禁じる法律を設けています。
家で体罰を受ける子どもの35%が、いじめに関与している
ここで、体罰が子どもに与える“負の影響”について見ていきたいと思います。
その代表が「いじめ」です。スウェーデン政府の調査(2011年)によると、家庭で大人から叩かれている子どもの35%が、誰かにいじめられたり、人をいじめていたりすることが分かっています(図1)。また、家で体罰を受けていない子どもに比べ、体罰を受けている子どもが、頭痛や不眠などに悩んでいる割合が非常に高くなっているという結果が出ています(図2)。
(図1)
(図2)
親が子どもを叩くのは一瞬のことかもしれません。しかし、叩かれた子どもの側が体や心に受ける傷は、簡単には癒やされないということが分かります。
今日、スウェーデンでは子どもの人権を重視することが社会全体に浸透していますが、実は1920年まで歴史を遡ると、親が自分の子どもを折檻する権利が法律によって認められていました。しかし、次第に人権に対する意識が高まり、58年には学校における体罰が禁止され、66年には親が子どもを叩く権利に関する記述が親子法から削除されて、大人と子どもに対する暴行に対して刑罰を科す、という内容が刑法に盛り込まれました。
それでもまだ「親は子どもを叩いてはいけない」という考え方はそれほど一般的ではありませんでしたが、国民は論争に参加し続けました。そんな中、国連が1979年を国際児童年に指定。さらに同年、ポーランドが子どもの権利に関する国際条約を提案したことなどを背景に、79年3月、国会においてほぼ満場一致での親子法改正案可決が実現したのです。
条文の内容を具体的に見ると、以下の通りになっています。