働くママの苦悩の根源とは……

「送り迎えは私がするっていつ決まったんだっけ?」

 主人公の女性が、足早に子どものお迎えに向かいながら考えます。実際、共働き世帯でも家事・育児の分担が、ママに偏ってしまう傾向があります。「女は家庭」というイメージが根強く残っているため、働くママ達には、仕事だけではなく家事・育児でも役割を果たすことが期待されてしまうのです。

 「女は家庭」は「男は仕事」とセットになって成立していたルールです。ひとり親家庭では以前から問題になっていたことですが、二人一組でやることを一人でこなそうとすれば、当然、負担は過剰になってしまいます。

 フルタイムで働いている以上、仕事で求められる成果に性別は関係ありませんし、責任も同じです。旧来的な男女観に基づいて、家事・育児が半ば自動的にママの役割になってしまっていないか。パパは意識的に考える必要があります

『大丈夫』には、女性からの「泣ける」という感想が寄せられています。単に大変さが描写されているだけではなく、働くママの苦悩が的確に表現されているからです。現実の自分の姿と重なり、思わず涙が出てしまうのでしょう。

「仕事も家庭も」と自分を追い詰める妻の葛藤

 「私は大丈夫だろうか。
 きちんとお仕事ができているだろうか。
 ちゃんと君を愛せているだろうか。
 そして、自分を愛せているだろうか。」

 この主人公のセリフには、仕事と家庭をうまく両立できないことが、自己否定にまでつながってしまう働くママの心理が描かれています。

 こうした「女は家庭」というイメージが残り続ける中で働くママが抱える葛藤を、パパは理解する必要があります。問題を共有できる人がいると分かることで、得られる安心感がありますから