前回の記事「トップ教師は『やる気を引き出すコツ』を知っている」に引き続き、「小学生の子どものやる気を引き出し、自分の力で考えさせるコーチング術」の真髄に迫っていきます。
「挑戦状」を使って、やる気を引き出した
前回に引き続きコーチング術を教えてくださる山田将由さんは、現在36歳の2児の父。民間企業で働いた後、8年前に小学校教員資格認定試験にパスして小学校教師になったという。そんな山田さんは、教師になった当初「教育界には素晴らしいメソッド(方法)がたくさんある」と感じたそうだ。
「例えば長縄跳び。次々と縄に入っていき3分間で何回跳べるかを数えるのですが、みんなで同じことに挑戦することにより一致団結するし、具体的な数字も出るので目標を立てて頑張りやすい。『長縄跳びをするとだいたい学級がうまくいく』といわれるくらい素晴らしいメソッドだと思います」(山田さん、以下同)
神奈川県の公立小学校で小学3年生を担任している山田将由さん。小学生へのコーチング技術をまとめた『トップ1割の教師が知っている「できるクラス」の育て方』の著者。模擬授業全国大会にて2度の優勝を収めたこともある
そこで自分のクラスでも長縄をやろうとした山田さんだったが、これがなかなかうまくいかない。特に高学年になってきて、生徒の半数近くが中学受験を志していると、クラスに求心力がなく、みんな真剣になってくれない。
もちろん授業でやるとなれば、嫌々でもやるのだが、休み時間を練習に当てるといった提案に乗って来る子は少なかったという。
どうすればやる気になってくれるのか――。こんな悩みを抱えていたとき、山田さんはコーチングに出会い、その要素を取り入れながらあの手この手を使った作戦を始める。
「そのとき私が受け持っていたクラスは、ひとつ下の学年にも劣るレベルでした。そこで奮起してもらおうと、『勝負しませんか?』といった挑戦状を下の学年のクラスから送ってもらったのです。そして『こんな挑戦状が来たけど、どうする?』と、問いかけてみました」
挑戦状を下の学年の子どもたちから送ってもらうことで、「どうする?」と子どもたちに問いかけるきっかけを作るのが、コーチングの大切なポイントだ。
「他にも、全国の長縄情報をさりげなく提供したりもしましたね。『君たち4月は120回で、今は166回と伸びている。でも、調べてみると長縄が盛んな千葉県では、平均350回らしいけど……みんなはどうする?』なんて聞いてみるのです」