メデラのさく乳室「マザーズルーム」は現在1人が利用中

 メデラでも、今年2月から本社オフィスの一角に、授乳中の社員のためのさく乳室「マザーズルーム」が設置された。柔らかなピンクの壁紙に間接照明、ゆったりとしたソファを配置した鍵のかかる個室で、電動さく乳機2台と専用冷凍庫が備えられている。

 現在こちらを利用しているのは、10カ月の第2子を母乳で育てている社員の武田靖子さん1人。たった1人のためにさく乳専用ルームを開放するのは非効率的と思うかもしれないが、利用者がいなくなったときには、生理中の女性が体を休めるスペースとして使ったり、社員の憩いの場として活用したりすることも視野に入れているそうだ。

 武田さんは9時30分と16時の1日2回、両胸の同時さく乳ができる自社製品の電動さく乳器を使って15分かけて行っている。

 1回でさく乳できる100ccの母乳を保冷バッグに入れて冷凍庫に保管しておき、退社時に持ち帰って、翌日保育園で飲ませてもらう。それとは別に2回ほどミルクを足しているものの「日中子どもと離れている間に、1回でも多く母乳を与えられることがありがたいです」と話す。

 2人の子どもを持つ武田さんは、下の子どもが5カ月のときにメデラへの中途採用が決まり、入社時、会社側からさく乳室の利用を提案された。当時は本社移転前で、専用のさく乳室は無かったが、会議室が空いている時間をブッキングして使用していたという。

 「会議室が埋まっているときは、社長室を使わせてもらったこともありました。復帰直後の慣れない保育園生活で子どもが不安定になったとき、子どもにとって母乳が心のよりどころになったようです」(武田さん)

ワーママの母乳育児継続は企業側にもメリットがある

 母乳育児を続けると、子どもの健康面でたくさんのメリットがあることは科学的に証明されている。例えば、母乳をよく飲む子どもは風邪や中耳炎にかかっても重症化しにくく、早く良くなるという報告がある。子どもが元気に保育園に通うことができて親が仕事を休むことが減れば、それは企業にとってもいいことだろう

 最近は保育園入園のタイミングの都合で、子どもが1歳未満のうちに復帰する女性が増え、育休が認められていない契約社員が、産後すぐに復帰するというケースもある。

 さく乳室をめぐっては、「授乳中の母親だけが特別扱いされている」ことに対する批判や反対意見も少なくない。だが、トイレでひっそりとさく乳を強いられているワーママ達がいるのもまた事実。今回の調査が、さく乳環境の整備に向けた議論を深める一つのきっかけになればいい。

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(文/中島夕子 写真/吉澤咲子)