犯罪者に出会ってしまったら、もう手遅れ
──家や学校では、よく「怪しい人に気を付けて」と子どもに教えています。しかし、小宮さんは「それでは子どもが守れない」と言われます。
そうです。残念ながら、それでは犯罪を防げません。それどころか、むしろ子どもを犯罪に巻き込む危険があります。
──むしろ危険というのは、なぜでしょう?
あなたは犯罪者をどんな人とイメージしますか? サングラスをかけて、マスクをしている人? 子どもを狙った犯罪者をずらっと並べても、そんな人、ほとんどいません。むしろ、犯罪者は「不審者」と見られないように気を付けているのだから、その反対のルックスを心がけているはず。犯罪者は見ただけでは分からないのです。「不審者に気を付けて」という言葉は、子どもに「犯罪者は見れば分かる」という誤解を与えかねません。
「怪しい人に気をつけて」と言っても、怪しい人とはどんな人だろう。例えばこの9枚のイラストの中に怪しい人はいるだろうか。犯罪者は、外見だけでは見分けられないのだ(イラスト/いらすとや)
他に、「人通りがない道や、暗い道は危ない」ということもよく言われますが、これも防犯的にはあまり意味がありません。
子どもを連れ去ろうと考えている人は、子どもがいそうにない、人通りがない道には行きたがりません。むしろ、子どもがたくさんいそうな、人通りがある道に現れるはず。そこで犯人は、連れ去るタイミングを計っているのです。
また、子どもを狙った犯罪者は、暗い道よりも、明るい道の方が好きです。明るい方が、好きなタイプの子どもかどうか確認しやすいし、そもそも、暗いときには、子どもはあまり歩いていないからです。
ところが、親や先生から「暗い道や、人通りがない道は気をつけて」と言われている子どもは、明るい場所や人が多い場所では油断してしまい、犯人に狙われてしまうのです。
──なるほど、日ごろの注意が逆効果になってしまうのですね。それでは、「知らない人に声をかけられたら、大声を上げて逃げて」というのは?
それも意味があるとは言えません。その前提にあるのは、「犯罪者が目の前に現れたら」ということですよね。しかし、犯罪者に出会ってからでは遅いのです。例えば交通安全教室で、「車にはねられたら、こんなふうに受け身をしなさい」とは教えませんよね。そうではなく、車にはねられない方法を教えているはず。犯罪に対しても全く同じことが言えます。