牧瀬伸行さん。獨協大学経済学部経営学科卒業、ICEF認定エージェント留学カウンセラー、NPO留学協会海外留学アドバイザー、実用英語技能検定(英検)1級、「Honeystone留学サービス」代表
英国男性は、遠慮なく育休を取る
川合亮平(以下、川合) 最初のお子さんが生まれたときは、夫婦ともロンドンで働いていたんですよね?
牧瀬伸行さん(以下、敬称略) そうです。私はロンドン中心地で語学学校の日本人スタッフで、妻は東ロンドンの職業訓練所に勤めていました。長女が生まれると、妻は1年間の育休を取りました。
川合 日本では長い期間の育休はもちろんのこと、職場によっては育休を取ること自体に後ろめたさを感じる女性もいると思います。英国では、その辺はどうでしょうか?
牧瀬 英国では、育休は働く人の権利としてしっかり認められています。社会全体がそういう認識なので、遠慮とか後ろめたさという感情は湧かないですね。ちなみに私の職場では、5歳以下の子どもがいる場合、男性も女性もともに1年間の育休(無給)が認められていました。私は、長女と次女が生まれたとき、妻のサポートをするためにそれぞれ2週間の育休(無給)を取得しました。
川合 新米お母さんと新生児には誰かのサポートが必要ですよね。両親や親戚が近くにいる場合は、夫は何もなかったように(笑)働き続けられるかもしれませんが、そうでない場合は、夫しかサポートできる人がいないわけですからね。育休を取るという夫の選択がごく普通のこととして社会的に認められているのはありがたいですね。
牧瀬 そうですね。
川合 実は、長男が生まれたとき僕も東京で同じように会社勤めをしていました。妻は初めての出産で戸惑いもありましたし、日本の病院で言葉の問題もあったので、当時会社員だった僕は、1週間くらい休む気満々だったんです。そこで、生後2日目に「妻の体調がまだもうひとつなので、とりあえず明日も休みます」という内容を電話で上司に伝えたところ、認めてくれたものの、「何で休む必要があるねん」というニュアンスがありありと伝わってきたんです(笑)。
僕は腹が立つとか悲しいとか以前に、ビックリしたんです。そういう反応はある程度は想像していたものの、実は、その上司は僕の人生の恩人と思っているほど素晴らしい方なんです。「あ、彼でこの反応か。じゃあ、日本の会社はどこ行ってもあかんやろな」と悟りましたね(笑)。そのとき、フリーランスになることを決心しました。当たり前ですが会社は根本的に利益優先なので、社員の育児生活は二の次なんですよね。自分で活路を開く以外に、育児に積極的に関わる道はないな、と思いました。